(VOVWORLD) -ベトナムでは4月21日を「本の日」として、読書の大切さをPRしたり、読書の習慣を奨励しています。
山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは。ソンです。
山崎 およそ1か月半ほどお休みを頂きました。また今日からよろしくお願いします。
ソン お願いします。今日のハノイ便りですが、ある民間の図書館を取り上げます。
山崎 ちょうどこのVOV5の建物の隣りに、ハノイ市の図書館があるんですよね。この頃は日本でも会員制の民間の図書館があるようですけど、やはり図書館というと公立のイメージですよね。でも最近は、みんなスマートフォンやタブレットをいじっていて、本を読む人が少ないような気がしますけど。
ソン そうなんです。そういったこともあって、ベトナムでは4月21日を「本の日」として、読書の大切さをPRしたり、読書の習慣を奨励しています。
山崎 「本の日」はいつからあるんですか?
ソン 2014年からです。グエン・タン・ズン前首相が決めました。そして、今年3月には、政府が2020年までの読書文化発展計画を策定しています。
山崎 政府あげての取り組みなんですね。
ソン そうです。行政府だけでなく、若者なども様々な形で読書文化作りにがんばっているんですよ。
山崎 それが民間の図書館ですか?
ソン はい。3年前に、ハノイ市内にBfreeという図書館が開設されました。
山崎 Bfree。英語ですね。自由に、とか無料で、ということですか?
ソン そうです。Bはブックの頭文字で、freeは無料という意味でその名前を付けたそうです。無料で本を読める図書館です。
山崎 ベトナムの公立の図書館は有料なんですか?
ソン 図書館で本を読んだり、借りたりすること自体は無料ですが、借りる時には有料で利用カードを作らないとだめなんです。
山崎 なるほど。Bfree はそういうのが一切かからないんですね。
ソン はい。そして、先ほど山崎さんが言ったように、Bfreeには「自由に」という意味もあります。この図書館で本を読むのはもちろん、敷地に木を植えたりするなど、自由にできます。
山崎 図書館をよりよくする活動ならご自由にどうぞ、ということですね。何でも好き勝手はだめですよね。
ソン そうですね(笑)。
山崎 でもそんな居心地のよさそうなところなら、大人気なんじゃないですか?
ソン はい。例えば、ハノイ郊外に住むある女子高生は、この1年間、毎週末、この図書館に通っているんですが、片道20キロの距離を自転車でやってくるんです。
山崎 20キロですか?自転車だと2時間近くかかりませんか?
ソン そうですね。でも、Bfreeでは貴重な本を存分に読むことができたり、借りられるということで、通っているそうです。その女子高生(Nguyen Thi Huyen)の話です。
(テープ)
「この図書館はうちからちょっと遠くて、広くはないんですが、たくさんの本があります。ここにある多くの本は昔のものなので、今、本屋さんにはないんです。私にとっては、最高の場所です。」
ソン 同じように、毎週末やって来るというハノイ師範大学の学生は、大学での授業にBfreeの本がとても役立っているそうです。
山崎 どうしてでしょう?
ソン 国内外の多くの文学作品の他に、社会心理学や科学に関するものなど、様々な分野の本があるからです。その大学生(Nguyen Thi Tuyet Hong)の話です。
(テープ)
「特に夏休みの間は、よく来ていました。普段は週一回です。私が本屋さんで面白い本を見つけた時には同じものを2冊買うんです。1冊は自分用に、もう1冊はBfreeに寄付するためにです。」
ソン このBfree図書館は3年前の2014年7月に、何人かの若者が始めました。
山崎 なぜ図書館を作ろうと思ったんでしょう?
ソン 設立者の1人、グエン・チュオン・ザンさんは、元々、読書が大好きでした。『本を本棚で死なせない』というポリシーを持つザンさんは、多くの人に本を読んでもらいたかったそうです。
山崎 自分だけで楽しむのでなく、他の人にも読んでほしいと思うのは、本当に本が好きなんですね。
ソン そうですね。ザンさんによると、ハノイでいい読書空間を見つけるのは本当に難しいということで、Bfreeを作ったそうです。場所を提供するだけでなくて、読書を習慣にしてほしいという思いもあったということです。
山崎 ここを訪れるのは若い人が多いんですか?
ソン はい。実はBfreeという名前の前は「本とあなた」という図書館名だったんですが、昨年の7月に、場所を移転した時、Bfreeになったんです。名前が変わった後、若者の間でよく知られるようになりました。
山崎 確かに「本とあなた」だと、ちょっと固い感じですよね(笑)。
ソン そうですね(笑)。現在、この図書館には1800冊の本があります。先ほども話しましたが、文学、歴史、科学など様々な分野の書籍です。この8割の本が利用者から寄付されたものなんです。
山崎 それはすごいですね。コメントしてくれた大学生も言ってましたね。本を買う時は2冊買って、1冊をBfree用にしている、ということでした。Bfreeの設立者の一人、グエン・クオック・チエンさんの話です。
(テープ)
「私達が運営しているプロジェクトは無料の読書というものが最終目的ではないんです。他のプロジェクトや企画の起爆剤になれればと思っています。誰でも非営利プロジェクトを運営できるというメッセージを発信したいんです。Bfree図書館は利用者がボランティア的役割を果たしています。週末以外は、ここにはスタッフはいません。」
山崎 チエンさんの考え、すばらしいですね。他の人へのいい刺激となるといいですね。今、Bfree図書館は、ハノイ市内に2つあるんですか?
ソン はい。街中のハイバーチュン地区に2つ目ができました。電力会社の敷地内にあるんですよ。
山崎 おもしろい。でもその会社も、社会貢献という点で評価されますね。Bfreeは、読書空間の提供と若者の読書習慣を作っていこうという所ですからね。
ソン そうですね。Bfreeには毎日およそ40人が訪れて、本を読んだり、借りたりしています。そこでの交流も生まれているんです。
山崎 それはいいですね。本についての情報交換ですか?
ソン それもありますが、生活情報や就職活動などについても話をしているそうです。
山崎 いいですね。本以上の思わぬ効果、交流が生まれてますね。これからのBfreeが楽しみです。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。今日のハノイ便りは、若者が非営利で運営する民間の図書館についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。