ベトナム中部フェ市に足を運ぶ観光客は、ベトナムのラスト・エンペラーの宮殿を見学したあと、夜のフォン川(香河)でフエの民謡カーフェ(Ca Hue)や伝統音楽を聞きながら遊覧船に乗る体験をしなければ、フェを訪れたとは言えません。
現在、多くの旅行会社はフォン川でフェの民謡を聞きながら遊覧船に乗る観光ツアーを企画しています。お一人様のツアー料金は15万ドン、約6百円ほどです。
フェの町に灯がともる頃、竜を形取った遊覧船が出発し、フォン川をゆっくり流れます。川の真ん中に着いたころ、エンジンが停止して、船は川の流れのままゆっくり漂います。やがて宮廷の伝統衣装を身にまとった楽団員が現れ、観客に挨拶をします。そして、夜の演奏が始まります。
現場の音
ベトナムの伝統楽器で演奏されるフェの伝統的な民謡が夜の静かさの中に響き渡ると聴く人はベトナムの最後の王朝時代にタイムスリップしたような錯覚に陥るようです。フェの民謡はフェの女性にしか表せない優しい歌声で歌われると人々の心をとらえます。
現在、フォン川の遊覧船でフェの伝統的音楽カーフェの歌い手は400人ほどいます。これらの歌い手の多くはアマチュアです。カーフェ楽団の団長の一人であるトン・ヌー・ティ・ホア(Ton Nu Thi Hoa)さんは次のように語りました。
(テープ)
「これはカーフェを愛する人々が自主的に結成した楽団で、毎晩アルバイトとして、演奏を行っています。私たちにとって、これは大変なことではありません。私は定年退職したので、アルバイトは生活に楽しみをもたらしています」
現場の音
トン・ヌー・ティ・ホアさんはこのように語りました。
これらの歌い手は少なくとも3年~5年にわたり、演奏していますが、新しい曲を学ぶことと歌の練習は日常的な仕事です。歌い手の一人であるタイン・トゥ(Thanh Tu)さんは歌い手ならば、フェの数多くの民謡を覚えなければならない」と述べ、次のように語りました。
(テープ)
「民謡の歌い手ならば、最も重要なことは民謡が好きであるということです。私たちは演奏するための訓練を受けました。例えば、一つの歌でも、それぞれの歌い手の演奏方法は違います。そのため、その歌に対する自分ならではの感情で歌っています」
現場の音
タイン・トゥさんはこのように語りました。
夜も深くなり、歌い手が夢中に演奏し、観客は切ない民謡を真剣に耳を傾けています。別れを告げた時、歌い手と観客は共にフォン川に灯篭を流しながら、再会の日を祈ります。