ベト(越)族の精神生活には結婚式は人生の節目となる重要な通過儀礼です。結婚式は地域によって異なりますが、民族色溢れた儀式です。現在、生活は現代化されつつありますが、ベト族の伝統的な結婚式は保たれています。
ベト族は結婚を人生の3つの重大な儀式の一つと考えています。また、言い伝えによれば、結婚が決められる際、女性の年齢に配慮しなければなりません。つまり、20歳、22、25、27歳の女性は結婚してはいけません。昔、ベト族の結婚式は6つの儀式を通過しましたが、今は結婚の申込み、婚約、結婚披露宴の3つに簡素化されました。結婚の申込みとは男性の家族が女性の実家を訪れ、両親に男女二人の結婚の許しを得る儀式です。ベトナム民族学博物館・ベトナム文化研究収集に携わっているブ・ティ・タイン・タムさんは次のように語りました。
(テープ)
「こうした申込みを通じて、両家は相互理解を深めた上で、結婚式の日どりを決めます。申込みに際し、縁起物のキンマの葉とビンロウの実だけを持参しますが、今は、果物、お酒、お菓子などを持参する家族もあります。申込みから婚約までの期間は特に決まっていません。3ヶ月間のケースもあるし、一年の場合もあります。」
申込みの後、婚約となります。結納は女性の要求に基づき準備されますが、一般的にキンマの葉、ビンロウの実、お茶、お酒、蓮の実の砂糖まぶしがあります。婚約まで、両家は結婚式の開催時間について話し合います。さきほどのタムさんは次のように話しました。
(テープ)
「婚約には彼の家族が持参した結納が女性の家の祭壇に奉納されます。その後、キンマの葉やビンロウの実、お茶、蓮の実の砂糖まぶしを含め、一部の結納が男性の家に返納されます。その後、結婚式招待状と一緒に女性の親戚、友人などに届けられるのです。」
そして、結婚式当日に花嫁と花婿は双方の祖先の祭壇に線香を手向け、結婚を伝え、幸福を祈ります。結婚式にゴザを敷く礼式が重視されています。タムさんは次のように明らかにしています。
(テープ)
「新婚夫婦が幸せに暮らし、たくさんの子孫に恵まれるようにござを敷く人は慎重に選ばれます。花婿の母や高齢者など子孫が多く優しい人でなければなりません。今も農村部ではこの儀式が重視されているようです。」
南部メコンデルタ地域の結婚式は基本的に北部の平野部と同じですが、儀式は複雑で時間がかかります。ベトナム民族学博物館の文化研究者ボ・マイ・フオンさんは次のように語りました。
(テープ)
「メコンデルタ地域の結婚式は北部に住むベト族とほぼ同じです。花嫁と花婿は祖先の祭壇に線香を手向けた後、花婿は花嫁を実家に連れて行くため、許しを申請しなければなりません。花婿の家に着いた後も祖先崇拝を行います。ただ、メコンデルタ地域の独特な原則と言えば、新郎が新婦を連れて実家に戻るまでは、手を繋いで行かなければならないということです。」
また、北部と南部メコンデルタ地域とは結納が違います。さきほどのフオンさんの話をお聴きください。 (テープ)
「北部の結納ではキンマの葉とビンロウの実は極めて重要です。南部の婚約と結婚式でキンマの葉とビンロウの実が使われますが、北部と同じように美しくて大きいな房のビンロウの実ではなく、小さな房でも大丈夫です。また、お酒、お茶、タバコの他にも2本の蝋燭がなければなりません。」
現在、ベト族の結婚式は昔より簡素化されましたが、伝統的儀式は守られています。また、地方や家庭によって結婚式は異なりますが、二人にとって人生の忘れられない思い出となることでしょう。