ベトナム北西部ソンラ省に居住している少数民族タイ族は独特な暦を持っています。この暦はタイ族の重要な伝統文化の一つで、現在も生活の中で大切に使用されています。

タイ族の暦は旧暦のように、月の満ち欠けの周期を基にしています。その周期を1か月とし、12か月が1年になりますが、1月は旧暦の7月にあたります。そのため、タイ族の暦によりますと、1年の季節の順番は、春・夏・秋・冬ではなく、秋・冬・春・夏になります。また、タイ族の暦は干支も使用されています。十干と十二支を組み合わせた60を周期とする数詞ですが、十二支は、象、水牛、虎、蜂、蛇、伝説の水棲怪獣、馬、ヤギ、猿、鶏、犬、豚です。 

タイ族の暦

タイ族の言語には、「1月は小雨が降る」や、「2月は雨が降る所もあれば、降らないところもある」、「3月は船着き場の水位があがる」など、この暦を使って天気を予報する表現があります。また、農業を本業とするタイ族の人々は、自然現象に基づいて栽培の季節を始めます。ソンラ市チエンレ地区に住む伝統文化研究者カ・ヴァン・チュンさんは次のように話しました。

（テープ）

「かつて、村人は、森に生息する木の実を見て農作業をする習慣がありました。例えば、「ハイ」という木の実が実れば、田植えをします。しかし、現在は暦を計算する担当者に聞いて農作業をする人が多いです。」

タイ族の暦の計算はかなり複雑ですから、どこの村にも、暦の手帳を保管して暦を計算する担当者がいます。その人は「ポム（Po mu）」と呼ばれ、暦の手帳は「チョンバン（Chong bang）」と呼ばれます。結婚式や新築の建前儀式など重要な行事を行う佳い日を選ぶとき、必ず暦を計算する担当者「ポム」に頼みます。タイ族の暦について95歳のロ・スオン・ハックさんは次のように話しました。

（テープ）

「タイ族の暦は旧暦とは違いますが、タイ族の人々は月を見て暦を計算します。また、経験が多い人は自然現象に基づいて天気を予報します。例えば、アリが高いところで巣を作ると、その年は嵐などが少ないということです。」

タイ族の暦の計算方法は複雑ですから、この暦をコンピューターに入れたり、本に印刷したりするなどの取り組みがありました。その中で、「ソンラ省のタイ族の暦の研究・編集・情報技術化」をテーマとした研究は成功したと評されています。その研究者であるカ・ヴァン・チュンさんは次のように話しました。

（テープ）

「タイ族の暦をコンピューターに入れました。コンピューターに保存されるものは1800年から2199年までの400年間の暦です。また、ベトナム民間文学協会はこの暦を印刷しました。その印刷物は、全7巻です。多くの人々にこの暦を知ってもらいたいと思います。」

この暦はタイ族の独特な文化を支えるものとして、これからも大切に保存・開発されるべきです。