(VOVWORLD) - 現在、グラー村の錦織共同生産組合は、メンバーたちの技能を高めるための研修会のほか、子どもを対象とした教室もよく開いています。
バナ族は中部高原地帯に住む少数民族の中で多数を占め、同地ならではの独特な文化の一翼を担っています。バナ族は稲作のほか、織物、鍛冶、製陶も行っていますが、その中で、錦織は歴史が最も長い職業の一つで、今もなお、大切にされています。
バナ族の錦織は古くから伝わる職業です。手づくりの錦はエレガントな模様が取り入れられ、バナ族の文化や人柄を表すとされています。
バナ族の女性は12~13才になると、母親から錦の織り方を教わります。結婚する前まで、綺麗な衣服を作らなければならないからです。バナ族出身の女性ならば、誰もが錦織ができます。女性たちの器用な手先で作られる独特な衣服や布団、絨毯などがよく知られています。特筆すべきは、木で造られたとてもシンプルな織機で、女性たちが綺麗な紋様がついた錦を織れるということです。
しかし、現代の生活の影響で、錦織が衰えた時もあって、消えてしまう恐れもありました。幼い時から錦織の技術を母から学んだ、中部ザラい省ダクドア県グラー村に住むムロップさんは、どうしてもこの伝統的な職業を維持しなければならないという決意をしました。ムロップさんは次のように話しています。
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「錦織は歴史が長いですが、消えてしまう恐れもありました。私の母と姉は錦織ができましたが、私も幼い時から好きになって、小学校4、5年生からは上手になりました。また、1990年代はこの仕事で生計を立てました。」
ムロップさんは、2006年、伝統的な錦織の復旧を目指し、この職業の女性たちを集めてグラー村の錦織共同生産組合を立ち上げました。最初、組合のメンバーはわずか40人でしたが、皆、この仕事が好きで、どうしても維持したいという気持ちを共有しました。ムロップさんの話です。
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「この職業からの収入は高くないですが、皆、好きです。暇な時、皆やっているんです。私は、組合の製品の販売を担当していますが、周辺の地方だけでなく、ホーチミン市やニャチャン市などにも出荷していて、販売は安定しています。」
グラー村の錦織共同生産組合が設立されてから10年以上経ちましたが、そのメンバーは300人にのぼっています。メンバーたちの技術はだんだん高まっており、製品の質も良くなっています。この組合のメンバー ヌガイさんは次のように話しています。
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「私は、小学校5年の時、ムロップさんの教室へ錦織の技術を身につけに行きましたが、今は子どもにこの技術を教えています。私の夢は、より多くの人に教えるとともに、より多い模様を作ることです。これは我が民族の伝統文化の保存に貢献できると思います。」
現在、グラー村の錦織共同生産組合は、メンバーたちの技能を高めるための研修会のほか、子どもを対象とした教室もよく開いています。これにより、錦織は昔のような勢いを取り戻していると言えます。ムロップさんの話です。
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「ここ数年、錦織はかなり発展しています。学生たちの多くは夏休みにお母さんを手伝っています。私たちは子どもにこの技術を教える教室をよく開いているんです。組合のメンバーたちは、コーヒーや胡椒の栽培を本業としていますが、この錦織からの収入は月に300万ドン(日本円で1万5千円)に達しています。」
伝統的な錦織の維持は、バナ族の伝統文化の保存だけでなく、地元の生活改善にも寄与しています。