北部山岳地帯に住むムオン族コミュニティでは祖先崇拝や多神教の信仰が普及しています。祈祷師は神と人間を結ぶ使者であると考えられ、コミュニティの信仰活動を行うという重要な責任があります。
現在、ホアビン省には祈祷師として活動している人はおよそ300人います。祈祷師はムオン族の信仰生活に重要な役割を果たす人物であり、優れた暗記力と表情豊な声がなければなりません。ホアビン省、タンラク県に住む祈祷師ブイ・バン・ルンさんは次のように明らかにしました。
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「これは先祖代々に受け継がれる職業です。祈祷師は仕事に心血を注ぎ、正直な人でなければなりません。また、重厚な話し方をする必要があります。我が集落には若い祈祷師もいれば、年をとった祈祷師もいます。」
ムオン族の葬儀
祈祷師は民族の風俗習慣、儀式に明るく、多くの古文書を保存することを始め、神との接触ができ、神の加護を祈る能力がある人であるとされています。フランス人の民間文化研究者であるロベクアイン氏は「ホアビン省とタインホア省に住むムオン族の優れた祈祷師はよく知られている。彼らは尊敬される」と語りました。現在も、ムオン族は大昔から伝わる礼拝の風習を保っています。先ほどの祈祷師ブイ・バン・ルンさんの話をお聴きください。
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「ムオン族は様々な礼拝文書を保っています。カマドの神様や土地の神様などの礼拝文書が異なります。礼拝文書の全てはムオン語です。また、それぞれの文書を読み上げるのに1時間かかりますよ。」
ムオン族の礼拝儀式としては村の礼拝や林の礼拝、死者と告別する儀式、集落の豊富を祈る儀式、新築祝い、畑仕事を始める儀式、新米の収穫を祝う儀式などがあります。祈祷師はコミュニティの精神生活に重要な役割を果たし、それぞれの人に対し、困難を乗り越えられるパワーと信頼を与えた上で、ムオン族の慣習法に従って、よい行いをするよう勧めます。
ムオン族の精神生活は礼拝儀式を通じて表れるとみられます。タンラク県、フォンフ村の住民ブイ・バン・トゥアさんは「ムオン族にとって、大晦日に祖先の供養を行う儀式は重要なものである。祖先に一年間の状況を報告し、家族と一緒に正月を楽しむよう招待するものだから」と明らかにし、次のように語りました。
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「祈祷師は重要な役割を果たしています。各家庭の礼拝儀式を助ける人物です。我が家の場合、大晦日の供養儀式は自分で行いますが、元旦の礼拝は祈祷師に頼まなければなりません。一時間ほどかかりますよ。」
祈祷師としての職は代々伝わるもので、ムオン族ならではの文化色を示します。また、祈祷師はムオン族の文化をアピールする人物でもあり、人々に対し、人間にとって重要な精神的価値とされる真善美に向けて暮らしてゆくよう激励する役割も果たしています。