(VOVWORLD) - ベトナム中部高原地帯テイグエン地方に居住している少数民族ムノン族は、コミュニティのつながりを大切にしており、兄弟や姉妹の契りを結ぶ儀式を行う習慣があります。この儀式は人間同士の団結や愛情、相互支援の強化を目指すもので、ムノン族のヒューマニズムを示すものとして知られています。
テイグエン地方にあるダクラク省ラック県ダックフォイ村に暮らすイ・ティエン・シルさんの高床式の家では、朝5時に、大勢の人が集まって兄弟の契りを結ぶ儀式の準備を始めました。これは、イ・ティエン・シルさんとイ・ナム・パン・ティンさんとの兄弟の契りを結ぶ儀式です。二人は長年とても親しい間柄ですが、家族のようにもっと親しい間柄になりたいと思い、兄弟の契りを結ぶことにしました。
儀式の様子 |
儀式のお供え物は豚肉、おこわ、バナナ、卵、まだ生きている雄鶏のほか、銅製の腕輪とビーズのネックレスそれぞれ2個です。これらのお供え物は兄弟の契りを結ぶ2組の夫婦の前に置かれます。儀式を主宰する人は村長のイ・クライ・シルさんです。村長はドラを鳴らしながら、次のように儀式の始まりを告げました。
(テープ)
「2人は以前から親しい間柄ですが、今日は兄弟の契りを結ぶ儀式を行います。私は儀式の司会役を担って、2人が健康で、本当の兄弟になりますようお祈り申し上げます。これから、いくら困難に遭ってもいつもそばにいて互いに助け合わなければなりません」
先ず村長は、2人の兄弟関係を神様に報告します。村長は、雄鶏の脚を酒に浸してから、7回鶏の脚を2組の夫婦の額に触れさせながら、神様と先祖に報告します。その後、鶏の翼から8本の羽毛を摘まみ取り、男性2人の耳に、女性2人の髪にそれぞれ2本ずつ付けます。そして、村長は銅製の腕輪を男性2人に、ビーズのネックレスを女性2人にかけます。これらは、これからは神様に守られることを意味するものであり、2組の家族の強いつながりの表れでもあります。
次は2組の夫婦が一緒にお供え物を食べる式です。先ずは、夫婦はそれぞれ村長から酒を入れた小さいガラス4個をもらって一気に飲み干します。そして、4人は村長からおこわや豚肉、卵、バナナをもらって一緒に食べます。互いに食べさせることもありますが、これは、2人の男性が兄弟となっただけでなく、2組の家族も親しくなって良い時も悪い時もすべてを共有することを意味します。男性の一人イ・ナム・パン・ティンさんは次のように話しました。
(テープ)
「兄弟の契りを結べば、本当の兄弟のように親しくなります。そして、私の家族と私の兄弟イ・ティエン・シルさんの家族も親しくなって、互いに助け合います。ムノン族は兄弟姉妹の契りを結べば、その関係を非常に大切にし、しっかりと守るからです」
兄弟姉妹の契りを結ぶ儀式が終わってから、村人は酒を飲んだり、歌と踊りを楽しんだりしながら、兄弟姉妹の契りを結んだ2人とその家族を祝福します。イ・ナム・パン・ティンさんとイ・ティエン・シルさんが兄弟の契りを結ぶ儀式に参加したホ・ラン・シルさんは次のように話しました。
(テープ)
「兄弟姉妹の契りを結ぶ儀式に参加するのは今回が初めてです。我が民族に対するこの儀式の重要性がわかりました。若者として、この伝統を守ってのちの世代に伝えたいと思います」
ムノン族の兄弟姉妹の契りを結ぶ儀式はムノン族の人間同士の密接なつながりに対するムノン族の考えを示し、先祖代々受け継ぐものですが、これからも、大切に保たれてゆくことでしょう。