(VOVWORLD) - ベトナム中部クアンビン省とハティン省に居住しているチュット族は人口がわずか6千人で、ベトナムの53の少数民族の中で人口が最も少ない少数民族です。チュット族は1958年に山中で発見されてから、原始的な生活から近代的な生活へと暮らしぶりが徐々に変わってきました。原始的な生活の一部の習慣は消滅しましたが、良き習慣は大切に保存されています。
チュット族の女性 |
チュット族について研究しているキム・ゴック博士によりますと、フランスの支配下にある1900年代頃、フランスの科学者や伝道師が執筆した記事にクアンビン省を流れるザイン川の上流の山中で原始的な生活を送っている人たちについて触れられていました。そして、1958年、ベトナムの国境警備部隊が、木の皮を衣服にする人たちをクアンビン省の原生林で発見しました。狩猟と採集によって生活していた彼らはチュット族であるとしています。ゴック博士は次のように語りました。
(テープ)
「かつて、フランスの研究は『ルック』や『アレム』という民族について触れました。また、ベトナムの古文も『サック』という民族について触れています。科学者の研究では、これらの民族は一つで、1973年に「チュット族」と名付けられたとされています」
チュットとはこの民族の言葉で高い山という意味で、この民族が元々山中に暮らしていたことを示します。科学者などがチュット民族の言葉を研究したところ、思いがけないことが発見されました。先ほどのゴック博士は次のように語りました。
(テープ)
「チュット族の言葉には、ベトナム語とムオン族の言葉に分かれる前の原始的なベトナム語の音声と声調がたくさんあります。科学者の研究によりますと、先史時代の人たちが北へ行って漢人と交流し、現在のベトナム人となり、現在のベトナム語を作りました。地元に残った人たちは北中部のタイ族と交流し、現在のムオン族となりました。そして、一部はラオスの人々と交流し、チュット族となったということです」
チュット族の村 |
現在、チュット族は、「サック」、「ルック」、「アレム」、「マイ」、「マリエン」といった5つのグループに分けられています。その中で、原始的な生活から抜け出した最後のグループは「ルック」グループです。しかし、国の支援により、ルックグループも安定した生活を送っています。現代生活に溶け込み、原始的な生活の一部の習慣は消滅しましたが、多くの良き習慣が大切に保存されています。その中で、栽培開始祭りは今もなお、保たれています。
旧暦の7月7日に行われる栽培開始祭りは、種まきを終えたことを示すものであり、神様に良い天候と豊作を祈るためのものでもあります。祭りは村の最も重要な行事とされ、村人全員が祭りの準備に参加します。祭りの主催者は村の最も有力な祈祷師です。祈祷師は神と人間との懸け橋として重要な役割を果たすのです。祭りで祈祷師はお祈りをした後、祭壇に置いてある茶碗からコメを少しとって周りにまき散らします。このコメは神様や先祖に村への道のりを案内するものです。その後、村人は、お供え物を食べながら、踊ったり歌ったりして祭りを楽しみます。
チュット族の生活は徐々に改善されていますが、昔からの良き習慣や文化は今も保たれています。