ベトナム北部山岳地帯に住む少数民族ザイ族は豊かな文化を持つ民族として知られておりますが、その中でも、ザイ族の民謡はこの民族の人々の精神生活の欠かせないものであり、その共同体の結びつけを補強しています。
ザイ族の踊り
ザイ族の民謡は種類がたくさんあり、それぞれの種類は歌詞とメロディーがさまざまです。民謡の内容として、自然や恋愛などが一般的ですが、金持ちを歌ったものもあれば、貧乏人の歌もあります。民謡を歌う場所や目的に基づいて、ザイ族の民謡は、飲み会の歌、恋愛の歌、そして、送別の歌という3つの形で歌われ、葬式、結婚式、お祭り、特に歌垣大会などすべての行事の欠かせないものとなっています。
ラオカイ省サパ県タヴァンザイ村に住んでザイ族の民謡のコレクションを趣味とするサン・チャンさんによりますと、結婚式では3つの歌がよく歌われ、それぞれの歌は決まった時点で歌われると明らかにしました。 チャンさんの話です。
(テープ)
「まずは花嫁が花婿の家に行く前に、花嫁の友達が花嫁の実家で集まって歌う歌です。この歌は、花嫁が結婚生活をどうしたらいいのかというアドバイスをした り、別れの気持ちを分かち合う内容です。花嫁のお母さんやおば、姉も、花嫁に結婚生活に関するアドバイスを含む歌を歌います。
それに対して、花嫁は両親の世話に対し感謝の気持ちを歌に乗って表します。花婿の親族は花嫁の実家の前で、門を開けてもらうためには歌を歌たわなければなりません。花嫁の親族と花婿の親族が歌垣をしてから、花嫁の親族は門を開けます。」
ザイ族の踊り「写真:dulich.chudu24.com)
ザイ族の民謡はお祭りやお正月などには欠かせません。自分の気持ち・望み、相手へのお祝いの気持ち、それから、コミュニティーの結びつきを内容とした歌が多いです。サンチャンさんは次のよう話しています。
(テープ)
「お正月がくると、友達が遊びに来るので、ご馳走を出します。 食べながら、歌い、お互いに祝うのが普通です。しかし、上下関係に基づいて順番に祝います。まずは村長に対し新年のお祝いを言って歌います。
次はその一家の主と家族 へのお祝いです。その後は宴会に参加した人たちがみな、健康や幸福などが訪れるような歌を歌います。親友の心はもちろんですが、お酒やお肉をも讃える歌もあ ります。」
ザイ族の日常生活では、民謡は様々な形で歌われますが、一番多いのは男女恋愛を求める歌垣です。しかし、歌垣はお客さんへの温かいもてなしを示すこともあります。サン・チャンさんの説明です。
(テープ)
「2~3日遊びに来たお客さんがいれば、ホスト側には歌を歌う人が一人もいなかった場合、お客さんが帰ったあと、そのホストやその村が“もてなしが悪かった”という歌を歌います。いいもてなしをしたホストは毎晩お客さんと歌を歌いますが、既に歌った歌を翌日歌っちゃダメです。
内容として、お互いに祝う歌があれば、夜しか歌わないので、夜空を讃える歌もあります。夜明けまで歌った後、別れの言葉を交わします。」
ザイ族の人々は悲しい時にも、嬉しい時にも、そして、働いている時にも歌います。二人だけの時でも歌いますが、もっと大勢が集まれば、もっと歌います。北部山岳地帯のラオカイ省サパ町に住むマ・ティ・ヒェンさんは次のように話しました。
(テープ)
「市場へ行く途中、または、市場でも歌いますが、帰ろうとした時にも、別れの歌を歌います。歌いながら、相手の村まで見送りに行くことも少なくありません。」
ザイ族の民謡は歌詞が華美ではなく、ザイ族の人々の性格のようにシンプルで地味です。歌詞には雲、風、月、星、滝、草などがありますが、自然を通じて人と人との 愛情を讃えるのが一般的です。こうした歌は、ザイ族のしっかりとしたコミュニティー作りに役立っていると言われています。