ベトナム中部に住む少数民族ヴァンキェウ族の生活は現代生活の影響で変化していますが、昔から伝わってきた伝統の保護に取り組んでいます。その中で、クァンチ省ダクロン県カル村では16軒の高床式の家が建設されたことは伝統的な高床式の家の保存事業に大きく貢献していると評されています。
カル村で新築された16軒の高床式の家
カル村のホー・タイン・マンさんは、まだ木材の匂いがまだ残る高床式の家で「カン」という地酒を飲みながら、伝統的な家について話し合っています。マンさんによりますと、ヴァンキェウ族の伝統的な高床式の家は、屋根が籐の木の葉っぱかわらで葺かれ、柱と屋根のフレームは木材か竹で作られます。しかし、現代生活の影響で、家の屋根が繊維セメントやシートメタルを使って葺かれるのが多くなっています。マンさんの話です。
(テープ)
「村人は伝統的な高床式の家に住めることをとても喜んでいます。経済的な余裕がなくて、伝統的な家を建てられなかったんです。昔のような立派な家ができて、ヴァンキェウ族の伝統が守られることをとても嬉しく思っています。」
16軒の伝統的な高床式の家はクァンチ省文化スポーツ観光局の支援によって建設されたものです。これは、ヴァンキェウ族の伝統文化保存プロジェクトの一環であり、ヴァンキェウ族居住地での観光を促進することによって地元の生活の改善を目指す計画でもあります。カル村は16軒の伝統的高床式の家の建設以来、少数民族の文化に興味を持っている人にとって魅力的な観光スポットとなっているからです。
伝統的な高床式の家を建てるには3億から4億ベトナムドン(日本円で200万円前後)がかかります。建設費は現地行政府の出金によるものですが、その建設は村人自分自身が昔から伝わってきたやり方でやりました。
新築された高床式の家のそばにいるホー・タイン・マンさん
ヴァンキェウ族の家は、タイ族やテイ族など他の少数民族の高床式よりシンプルで小さいですが、夏には涼しく、冬には暖かいと評される高床式の家です。部屋は右から左へと決まった順番に配置されます。右の一番最初は居間で、次は寝室ですが、寝室も年上の人が右側に居るという順番です。左の一番手前は倉庫になります。
ヴァンキェウ族の家は屋根が激しく傾斜して、籐の木の葉かわらで葺かれて、そのフレームは竹で作られます。カル村の村長ホー・ヴァン・フムさんによりますと、家の建設で一番難しいのは屋根葺きで、巧みな手際が求められます。かつて、ヴァンキェウ族の男性は誰もが屋根葺ができましたが、現在は、わずか数人のお年寄りしかできません。フムさんは、伝統的な高床式の家は、職人たちの技術を次世代に伝えることにも役立つと述べ、次のように語りました。
(テープ)
「かつては伝統的な高床式の家をたくさん建てていましたが、現代生活の中ではだんだん消えてしまっています。今回建てられて嬉しいです。「これがヴァンキェウ族の伝統的な家ですよ」と、観光客に紹介できるようになりました。」
観光スポットとなっているカル村では、村人は伝統的な祭りを回復して観光客に紹介するように毎日一生懸命練習しています。クァンチ省文化スポーツ観光局プロジェクト管理委員会のファム・ヴァン・タン委員長は、伝統的な高床式の家を建てたほか、観光客用の宿泊所など観光用のインフラ整備を進めていると述べ、次のように語りました。(テープ)
「有形文化財と共に、伝統的な祭りや伝統的な料理など無形文化財の回復も進めています。また、コミュニティー・ツーリズムを大切にしております。コミュニティー・ツーリズムをうまく実施できれば、地元の人々はより多くの仕事につけます。住民たちの収入が増えるにつれて伝統の保存にさらに取り組むでしょう。」
ベトナム戦争中、北から南への陸上補給路いわゆるホーチミン・ルートの途中にあったカル村は歴史的にも文化的にも自然的にも観光発展の潜在力が大きいと言われています。こうしたカル村で建てられた伝統的な高床式の家は、観光客をさらに魅了することでしょう。