少数民族ラグライ族のお別れ儀式「ボマ」とは

ベトナム中南部に居住している少数民族ラグライ族は、生きている人の世界と死者の世界が共に存在していると考えられています。生きている人の世界は“仮の世界”である一方、死者の世界は永遠です。そのため、死者との告別を意味する「ボマ」という儀式はラグライ族の人々の精神生活において重要な意義を持っています。

少数民族ラグライ族のお別れ儀式「ボマ」とは - ảnh 1
ボマ儀式の風景

共同体的連帯を大切にしているラグライ族の人々は、どんなに忙しくても村人全員を集めて死者との告別式「ボマ」を盛大に行ないます。ボマはその人が亡くなってから1年か2年後に行なわれるのが一般的です。ラグライ族の人々は、ボマを行なわない限り、生きている人と死者との関係が続くので、死者に最後の「お別れ」を言うボマを行なうべきだと考えています。ラグライ族の人でこの民族の文化を研究しているマウ・クォック・ティエンさんは次のように話しています。

(テープ)

「昔から伝わるラグライ族の行事は沢山ありますが、最も特徴ある儀式はボマです。ラグライ族の人々の考えでは、死者に対してボマの儀式を行うべきで、これは、死者に対するまだ生きている人の愛情と責任を示すものなんです。」

ボマ儀式を行なうためには数ヶ月の準備が必要です。先ずは、ニャーモー(nha mo)と呼ばれるお墓の家を建てることです。ニャーモーはお墓を覆う家で、儀式はこの家の周りで行なわれます。ニャーモーの屋根の上にはカゴー(Kagor)と呼ばれる木製の船が置かれます。鳥や動物の模様が刻まれたこの船は死者の財産の現れであり、死者への生きている人のプレゼントでもあります。また、祭壇では、死者の写真の上に甕があります。この甕は死者の魂が住む所であると考えられます。ラグライ族の一人マウ・スアン・ザインさんは次のように語りました。

(テープ)

「この甕は子孫に死者を思い出させるためのもので、伝家のものとして大切にされていました。かつては長年保存する習慣がありましたが、今はボマの後、処分します。」

少数民族ラグライ族のお別れ儀式「ボマ」とは - ảnh 2
ニャーモーとカゴー

ボマは3日間行なわれますが、それぞれの日ごとに異なる習慣があります。1日目は、供え物を準備することと他の村の親族や知り合いに告げることです。供え物として「カン」という地酒が入った3個の甕、3匹の豚、1頭の牛か水牛、鶏、アヒルなどが挙げられます。1日目に、村長は、ボマ儀式の時間と場所などを死者に告げる儀式を行ないます。その儀式の後、先祖があの世で死者の魂を受け入れるため、村人は踊ったり、泣いたり、拝んだりします。

2日目はボマの最も重要な儀式です。この日、村人は死者との別れを意味する食事会に参加します。村長と遺族はニャーモーつまりお墓の家に行って死者の魂を遺族の家に連れて食事会を行ないます。村人は皆、翌日の朝まで食事をしながら、歌ったり踊ったりします。

3日目は死者との永遠の別れをする日です。男性たちは供え物をニャーモーに運び出します。村人はニャーモーの周りに並んで、死者との別れをします。その後、カゴー(Kagor)と呼ばれる木造の船を見送る儀式、つまり、死者に財産を贈る儀式が行なわれます。先ほどの文化研究者マウ・クォック・ティエンさんは次のように語りました。

(テープ)

「現在、死者に財産を贈る儀式は象徴的なものです。かつては、ドラ、鍋、籠など日常生活で使われる本物の家具をお墓に置きましたが、現在は、象徴的なもの、例えば、切った竹を残します。本物の家具は遺族が持ち帰ります。」

ボマ儀式では、建築、彫刻、音楽、舞踊などラグライ族ならではの文化が見られます。その意味で、ベトナム文化スポーツ観光省は2012年、ボマ儀式を国家無形文化財として認定することにしました。

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