(写真:Red Pill Times)
アメリカ下院は16日、TPP=環太平洋連携協定締結に伴い職を失う労働者を支援するためのTAA=貿易調整支援法案の2回目の採決期限を7月30日まで延期することを決めました。下院は賛成236、反対189で、TAA法案の再投票延期を可決しました。TAA法案は、TPP交渉妥結の前提となるTPA(ファストトラック)=大統領貿易促進権限法案成立に不可欠とされる関連法案です。採決期限の延長によって法案への支持拡大に向け時間稼ぎが可能となる一方、オバマ大統領のTPP交渉妥結に向けたタイムフレームはそれだけ圧迫されることになります。
TPA法案は日本、アメリカなど12カ国によるTPP妥結の大前提となっています。アメリカはTPAを分離・優先処理することでTPP交渉に臨む構えです。今夏のTPP大筋合意を巡る与野党の攻防は再び緊迫した局面を迎えました。
12日の下院本会議ではTPA法案自体は僅差(きんさ)で可決されましたが、同法案に束ねられた失業者への財政支援措置を柱とするTAAが否決されました。一括法案のためTPA自体の取り扱いも暗礁に乗り上げており、下院多数派を握りTPAとTPPを確実にしたい野党・共和党が打開策を探っていました。
当初、共和側も下院でもう一度TAAの再採決に臨み、最短の時間でTPA法案と一緒にオバマ大統領のもとに送る道を探っていました。ところが与党・民主党が態度を硬化させたままでTAAの過半数を確保するメドが立たない状況です。
このため共和指導者のベイナー下院議長らは17日夕までに、TPAとTAAを分離し、優先順位の高いTPAを独立した法案として両院で再可決する方針へ転換しました。
TPAはすでに可決されていますが、単独法案に書き換えるのに伴い、内容はほぼ同じであっても改めて採決する必要があります。ベイナー氏らの意向を踏まえ、17日夕の下院議事運営委員会では18日の本会議でTPA法案を単独で審議入りすることを決定しました。早ければ同日中に再採決に踏み切るとの観測も広がっています。
TAAは分離後、民主党が支持しやすい他の法案と組み合わせるなどして上下両院で可決しやすくする案が浮上しています。しかし、TAAがTPAから切り離されて宙に浮く事態になれば、下院の1回目の採決でTPAに賛成した民主党議員の一部が再採決で態度を変えて反対する恐れがあります。同じく上院でも民主党の一部がTPA反対に転じる可能性が出るなど、可決に必要な数の確保を巡って波乱含みとの見方が強まります。