イラク・モスルでの人道的危機


イラク軍はアメリカなど融資連合軍の支援を受け、今月中旬からモスル奪還を目指した大規模な軍事作戦を開始し、周辺の村を次々と制圧するなど戦果を強調していますが、イスラム過激派組織「イスラム国」側も激しい抵抗を続けています。こうした中、国連人道問題調整事務所は、「自宅を追われたモスル市民が1万人を超えた」と発表しました。


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市外への退避を試みている市民(写真:Reuters)


「イスラム国」の最大で最後の拠点とされるモスルの奪還作戦が今月17日から始まり、これにはイラク軍兵士とクルド人部隊あわせて数万人が参加しています。有志国連合も空爆や作戦指揮で支援しています。これは2003年以来、最大規模のものとされています。


激しい戦闘

イラクメディアなどによりますと、26日、クルド人部隊が、北部モスル近郊の2つの村を新たに制圧しました。村には、「イスラム国」の戦闘員たちが残した大量の武器が見つかったほか、98人の住民が保護されました。

奪還作戦が始まってから10日間で、イラク軍などは「イスラム国」が支配していたおよそ90の町を制圧し、住民1万人近くが避難したということです。一方、クルド人部隊の進軍にともない、モスルにいる「イスラム国」の戦闘員が居住地域を変える動きもみられ、市街地での激しい戦闘も続けています。

また、「イスラム国」はモスル周辺での抗戦に加えて、キルクークやルトバなどの都市で自動車を使った自爆テロを連続して試みるなど、抵抗は激しさを増しています。さらに、モスルへの攻撃を防ぐため、一般市民を「人間の楯」として利用しているという報道もあります。


被害者となる一般市民

国連人道問題調整事務所は26日、イラク軍などがイスラム過激派組織「イスラム国からの北部モスル奪還作戦を17日に開始して以降、自宅を追われたイラク人が1万人を超えた」と発表しました。国連人道問題調整事務所は声明で、「現在、1万500人余りが避難し、人道的支援を必要としている」と明らかにしました。

大規模な脱出が始まったことを示す兆候はみられないものの、避難者は過去2日で急増したということです。ただ、援助団体がイラク軍のモスル到達時に発生を見込んでいる避難民の数に比べると、ごくわずかと見られています。市内に残っているとみられる100万人を超える住民の中にも市外への退避を試みている人が出ています。援助団体はモスル周辺でキャンプの設営や支援物資の搬入を急いでいます。


人道的危機

避難民の間では、女性が目立つということで、避難してきた人の証言から、男性は多くが拘束されたか、戦闘に巻き込まれて死亡したおそれがあるということです。また、特に14歳から18歳までの少年が少なく、国連では、ISによって強制的に徴用されたり、「人間の盾」とするために連れて行かれたりした可能性があるとして懸念を示しています。

アナリストらは、「奪還作戦は重要局面に入り、ISが徹底抗戦することから、一般市民はさらに被害を受ける」と指定しています。

 

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