ウクライナでは議会選挙をボイコットした親ロシア派が東部の一部の地域で独自の指導者などを選ぶ選挙を行ったことに対し、ウクライナ政府は、軍事や、法律などの面で複数の対抗措置をとっています。これにより、親欧米の西部と親ロシアの東部で分断が固定化し、内戦が長期化する懸念が高まっています。
東部で展開されたウクライナ軍の戦車(写真:kienthuc.net)
2月の事実上のクーデターの後、自称「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」が誕生しました。そして、9月16日に、ウクライナ議会はドンバス地方のドネツク州、ルハンシク州の一部の地区に一時的な特別自治権を与える法案を採択しました。
しかし、ルガンスク州とドネツク州の一部の地域では2日、親ロシア派が独自の選挙を行いました。ウクライナ政府だけでなく、欧米諸国はこれを強く批判しています。
責任の押し付け合い
ウクライナ政府はこの選挙に関し、「違法だ」と反発していますが、それにとどまらず、ポロシェンコ大統領は4日、親ロシア派武装勢力による掌握範囲のさらなる拡大を阻止するため、東部で再軍備と部隊の増派を実施すると発表しました。
ポロシェンコ大統領は、分離独立を訴える武装勢力は新たな攻撃を仕掛ける構えを繰り返し見せており、それが実行された場合も政府軍の応戦準備は整っていると警告しました、一方、新ロシア派は、選挙に関し、「民意を得た」と主張し、「ウクライナ政府は『人民共和国』を承認すべきだ」と強調しました。
また、ウクライナ政府がドネツク州とルガンスク州の一部の地区に一時的な特別自治権を与える法に違反しているとも指摘しています。
危機の深刻化
ウクライナ政府は、新ロシア派の強固な姿勢に譲歩していません。ポロシェンコ大統領は親露派の支配地域に「特別な地位」を付与し大幅な自治権を認める法律を取り消す方針を明らかにしました。東部の「特別な地位」を軸とするウクライナ政権と親露派の和平合意は事実上破綻しました。
さらに、欧米諸国や国連が東部の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の選挙を「和平合意違反」として批判するのに対し、ロシアが「和平合意に合致する」として認めたことも緊張を増しています。
ウクライナ危機が発生してから1年が経ちました。これまで、双方間の戦争は4000人以上の死者を出しましたが、収拾の手掛かりを当面失い、武力衝突の再燃と拡大が懸念される最悪の展開となっています。こうした中、アナリストらは「ウクライナの将来は予断できない」との悲観的な見方を示しています。