ギリシャ議会は16日、ユーロ圏各国が金融支援の協議を始める条件としている構造改革の法制化のため関連法案を賛成多数で可決しました。日本時間の16日未明に始まったギリシャの臨時議会では、増税や年金制度の改革などを盛り込んだ財政緊縮策に関する法案について、審議が行われました。これは、ギリシャに対する最大860億ユーロ、およそ11兆7,000億円規模の財政支援の交渉を始める条件として、EUなど債権団側が求めていたものです。
ギリシャ国内でさらなる緊縮策への国民の反発は根強い(写真:ANTD)
賛成229票、反対64票、白票6票でしたが、チプラス首相率いる最大与党・急進左翼進歩連合は32人が、改革関連法案は反緊縮を掲げた政権公約に反するとして、反対票を投じました。これはギリシャ与党内の亀裂を表わしています。
当面の困難
今後、ユーロ圏各国の議会で承認されれば、支援に向けた交渉が再開される見通しです。これによって、ギリシャは、新たな金融支援に向けて一歩前進しました。しかし、支援計画は多くの困難に直面すると指摘されています。まず、債権団側の手続所要時間に関する問題です。これは数ヶ月かかると予測されています。
一方、ギリシャ国内で、さらなる緊縮策への国民の反発は根強く、採決を前に議会周辺で開かれた抗議集会では、一部の参加者が火炎びんを投げるなど暴徒化し、これに対し警察が催涙弾を撃つなどして、一時、騒然としました。けが人は出なかったとみられますが、EUが求める緊縮策をほぼ受け入れたチプラス政権の「変節」ぶりに、国民の間に不満が残っていることをうかがわせました。
一時的解決策に過ぎず
縫製改革の法制化により、国家破綻の瀬戸際にあったギリシャは当面の危機を回避できる見通しになりましたが、専門家は慎重な姿勢を崩していません。IMF=国際通貨基金は14日、ギリシャの政府債務に関する最新の報告書を発表しました。直近2週間の経済混乱が財政に一段と悪い影響を与えたと指摘し、財政を持続可能にするため、30年間の返済猶予や、元本削減など、EUの想定を超える大きな債務減免が必要と強調しました。
具体的には、今後2年間はGDP=国内総生産に占める債務比率は200%に達するとみています。2014年の177%から大きく悪化します。2022年までの中期でみても債務比率は170%と、従来想定より高い水準で推移する見込みだということです。
予断できない将来
2010年から、ギリシャの各政権は債権団側の要求を遵守してきましたが、問題を解決することができません。ギリシャ統計局によりますと、今年3月時点で、同国の失業率が26・5%に達しています。特に、15-24歳の若者の失業率は58.3%に上っています。
こうした中、アナリストらは「今回の財政緊縮策により、情勢がさらに悪化する」と懸念しています。そして、「今後もギリシャ危機はさらに複雑に推移していく」との悲観的な予測も出ています。