ユーロ危機の発端となったギリシャの総選挙で、緊縮財政政策の見直しを訴えて第一党となった「急進左派連合」のチプラス党首が新しい首相に就任しました。
チプラス新首相(写真:AFP)
チプラス氏は 「財政の水攻め」をやめるよう求めています。だが、ドイツをはじめとするほかの欧州諸国は一歩も引かない構えです。仮に妥協点が見いだされなければ、ギリシャは2015年末までに欧州単一通貨ユーロの圏内から追放される可能性があります。
ギリシャが抱える問題は、ほかの欧州諸国とは比べ、ものにならないほど大きいとなっています。ギリシャの景気後退は1930年代と同じくらいの深刻さです。失業率は高止まりし、ほかの欧州諸国がかつてないほど低コストで資金を調達しているのに、ギリシャは資本市場から閉め出されたままです。2012年の債務返済繰り延べのあと、ギリシャの巨額な負債の大半は、ほかの欧州諸国が肩代わりしています。
有権者の願望に見合う急進左派連合の選挙戦戦略
なぜ急進左派連合が今回の総選挙の争点として債務の履行拒否を掲げたのかは分かりやすくなっています。アメリカの資産家ジャン・ポール・ゲッティ氏はかつて「あなたが銀行から100ドルを借りているならば、それはあなたの問題だ。
だが、もし1億ドル借りていれば、今度は銀行の問題になる」と語りました。ギリシャが窮地に陥っていることで、結局は債権国も交渉のテーブルに着くかもしれません。数年にわたり、GDP=国内総生産の5%にあたる財政黒字を、債権者である外国から受けた支援を返済するためだけに費やすのです。
IMF=国際通貨基金は債務の一部免除に賛意を示していますが、事情は変わりません。ギリシャに対する債権国であるEU=欧州連合加盟国にもギリシャへの歩み寄りを拒否する大きな理由があります。急進左派連合の要求を受け入れれば、政治的に大きなツケを払わざるを得なくなるかもしれません。
なかでもドイツのメルケル首相は、EU懐疑派の政党であるAFDに突き上げられています。ギリシャの急進左派連合が同国の債務問題をうまくまとめれば、域内で経済不振にあえぐほかの国々でも急進政党が勢いづくとみられます。どんな国でも、身の丈にあった経済運営に取り組まなければならないのです。
欧州連合が懸念
ユーロ圏は26日、 ブリュッセルで財務相会合を開き、ギリシャ問題を協議しました。同会合のデイセルブルム議長は記者会見で、「ギリシャがユーロ圏への残留を望むことはこれまでの合意が適用されることを意味する」と指摘しました。
また、ギリシャの債務問題について「一夜で消えたわけではない」と 述べ、債務減免の要求を掲げて選挙に勝利した急進左派連合をけん制しました。
同議長は今後の対応について、「新政権の姿勢を見極める必要がある」と、慎重な言い回しに終始しました。ただ、議長は会合前、急進左派連合が求めている債務減免に関し、「欧州内での支持はほとんどない」と述べました。
ギリシャ新政権は今後、EUなどに対し債務の削減などを求める方針で、債務問題が再燃することは避けられない情勢です。