13日、内戦の続くシリアで、アサド政権は人民議会選(定数250)を実施し、首都ダマスカスなど政権側支配地域で投票が行われました。人民議会選挙は、シリア内戦が勃発して以来2度目となっています。選挙では、候補者3000人あまりが登録しました。
安全保障と経済:有権者の大きな関心事
今週初め、シリア選挙高等司法委員会のヒシャム・シャアール委員長は、「イドリブ、ラッカ、アレッポ、デリゾールなどの都市に住む有権者は行政地域にある選挙所で選挙に参加出来る。」と明らかにしました。首都ダマスカスのメイン通りには、アサド大統領政権が開催する人民議会選挙ポスターや横幕が掲げられています。その一方で、多くの有権者は、25万人を超えるシリア人の命を奪ったシリア内戦が5年続いている背景の中で、国内での安全保障状況を早期復活させたい意向を表明しています。そこで、候補者らは選挙運動の中で、シリア内戦の解決策と過激組織IS=イスラム国との戦いに関する内容に集中したということです。
その他、内戦による経済的な損失は有権者の関心事の一つでもあります。シリアのバッシャール・アサド大統領によりますと、5年続いたシリア内戦は同国にもたらした経済的損失は2億ドルを超えました。
有権者が関心を持っているもう一つの問題は、国の再建に財源を集中させる為、汚職との戦いを推進するということです。
シリアの平和をもたらす選挙であるか?
シリア人民議会選挙は欧州とシリア反体制派から反対されたことがあります。シリア政権は、3月24日に一時中断される交渉の第2回目が、4月13日に議会選挙が行なわれることから延期を要請しました。反体制派は、選挙は関係ないとし、延期の案に反対しています。反体制派高等交渉委員会のヤヒヤ・カダマーニ副委員長は、「非正規の選挙のための交渉延期は受け入れられない。」と述べました。一方、 ロシア科学アカデミー世界経済・国際関係研究所国際安全センターのアレクセイ・アルバトフ所長は「シリア人民議会選挙はシリア停戦合意に消極的な影響をもたらす恐れがある。」と語りました。シリア国民の中でも、この選挙を支持する人もいる一方、投票しないと言った人も少なくないようです。
このようの中、ロシアのプーチン大統領は、フランス、ドイツ、イギリス首脳との合同電話会談で、シリアの第2期人民議会選挙に関して「政治的正常化プロセスの障害になるとは思えない」と述べました。
5年続いたシリア内戦は終結の兆しを見せていません。国連の仲介によるシリア和平交渉と今回の人民議会選挙はシリアに平和をもたらすと期待されています。しかし、このことは容易でなさようです。