シリア内戦の解決について政府と反政府勢力が2年ぶりに話し合われる和平会議が、25日から始まる予定でしたが、双方の間の溝が深く、開始が遅れてしまいました。最初は27日に開始する見通しがあるとの情報が流されましたが、シリア問題を担当する国連のデミストゥラ特使は25日、ジュネーブで記者会見し、シリア政府と反体制派による和平協議を29日に開始する意向を明らかにしました。しかし、協議に入っても、シリア情勢の安定化に向けた道のりは険しいのが現状です。
シリア内戦(写真:VNMedia)
政府軍、北西部の要衝奪還 和平協議有利に
和平協議に先立つ24日、シリアの政府側部隊は地中海に面する北西部のラタキア県で、反体制派が掌握する最後の主要な町となっていたラビアを奪還しました。政権側はロシア軍の空爆による支援を受け、北部アレッポ県や首都ダマスカス郊外でも攻勢を強めています。軍事的に優勢に立つことで、和平協議を有利に進めたい思惑があるとみられます。
政権側は今月、約10キロ南東のサルマも奪還しており、ラタキア県全域の確保に近づいています。政府軍は「反体制派の補給や部隊の移動を制限できる」と優勢を強調し、イドリブ県の奪還も視野に入れている模様です。
政府軍は昨年後半以降、アレッポ県やダマスカス郊外、南部ダルアー県など、ほかの反体制派の支配地域でも攻勢を強化しています。昨年9月にロシア軍が空爆を始めて以降、各戦線で優位に立っています。
和平協議の調整が難航
シリアの政府と反政府勢力が話し合う和平会議が25日から29日に先送りされたことは反体制派側の参加組織選びで調整がぎりぎりまで難航しているからです。反体制派の交渉団確定をめぐり、アサド政権の後ろ盾のロシアは、反政府勢力の一つ「イスラム軍」をテロ組織として「イスラム軍」の参加に反対しています。トルコはテロ組織と見なすクルド人勢力からの出席を受け入れないなど、各国の立場の違いが表面化しました。
国連のデミストゥラ特使は、協議の参加者の顔ぶれはまだ確定していないと認めた上で、26日にも招待状が発送されると話し、29日に始まるのも確実ではないと示唆しました。
和平協議、シリアに平和回復につながるか
この和平協議は国連の仲介で昨年合意に至った計画の一環で行われるもので、計画では交渉後に移行政権を発足させ、1年半以内に新憲法の制定と選挙を行うことになっています。デミストゥラ特使は、和平協議の内容について「シリアの新たな統治機構や憲法の制定、それに選挙の実施について協議する」と述べる一方で、まずはシリアの停戦の可能性や、過激派組織IS=イスラム国家の脅威をどう取り除くか、それに人道支援の強化について優先的に協議したい考えを示しました。
和平プロセスの進め方でも、アサド大統領の退陣を求める欧米やサウジアラビアと、大統領を支えるロシア、イランの間で思惑の差は大きいです。また、サウジとイランが断交したこともあり、先行きの不透明感が増しています。