国連総会に出席しているアメリカのオバマ大統領とロシアのプーチン大統領の首脳会談が２８日、ニューヨークの国連本部で開かれました。内戦が続くシリアのアサド政権の早期退陣を求めるオバマ氏と、アサド政権存続を支持して軍事的支援を強めるプーチン氏の意見は対立し、平行線をたどりましたが、両首脳はシリア問題で今後も政治解決の道を探ることで合意しました。これはシリア情勢の解決につながると期待されています。

米露首脳会談（写真：クレムリン）

米露の握手？

アメリカとロシアの不和の原因の一つはシリアです。シリア領土の約半分を支配しているイスラム教スンニ派の過激派組織ＩＳ「イスラム国」を掃討するという共同の目的を目指していますが、アメリカを始めとする西側諸国とロシアは、焦点となっていたシリアのアサド大統領の処遇については隔たりが大きいです。

首脳会談で、オバマ大統領は、「アサド大統領が政権を維持するかぎり、シリアの安定はない」として退陣が必要だという考えを強調しましたが、プーチン大統領は「アサド大統領は過激派組織に対する防波堤だ」として、アサド政権を存続させるべきだと主張しました。しかし、アメリカとロシアは、イスラム国掃討を最優先課題として連携を強化する必要性を認識しています。

シリア情勢の解決へ

国連総会の一般討論演説でプーチン大統領は、「真に広範な国際有志連合を創設しなければならない」と述べ、アメリカ主導の有志連合にロシア、アサド政権、イランなどを加えた「大連合」構想を公式の場で提唱しました。また、大連合構想を念頭に、３０日に開かれる安全保障理事会の会合で議長国として、各国軍の共同行動を規定する決議採択を目指し討議する意向を示しました。

一方、オバマ大統領は「紛争解決に向けイラン、ロシアを含むいかなる国とも連携する用意がある」と述べています。しかし、「アサド大統領から、新しい指導者への政権移行が必要だ」とクギを刺しました。

それに対し、欧州諸国はシリア問題について従来より柔軟な姿勢を示しているようです。イギリスのキャメロン首相は国連総会で演説し、「アサド政権を、管理された状態で一時的に存続し、新体制への移行を目指す」と述べました。キャメロン首相は今まで、アサド大統領の退陣はシリア団結政府を樹立するための前提条件であるとの姿勢を示していました。ドイツのメルケル首相も、シリア情勢を解決するにはアサド政権を含む関連各側との対話が必要だと強調しました。

イスラム国掃討とシリア内戦の解決を目指すには、関係各側の連携が不可欠です。その意味で、ロシアやアメリカを始め、関係各側に対し、ＩＳなどのテロの撲滅、そして、24万人の死亡につながったシリア内戦の終結を最優先課題として対話と連携を強化してほしいものです。