ブラジルでは、ルセフ大統領が政府会計の不正操作に関わったなどとして弾劾に向けた手続きが議会で進められています。議会上院ではルセフ大統領に対し弾劾法廷を設置するかどうか、11日午前から採決に向けた審議が始まり、議員が1人ずつ意見を表明してきました。
(写真:AFP)
弾劾法廷の設置を巡る審議は4月に下院で可決しました。定数81の上院で賛成が過半数の41に達すれば、法廷設置が決まり、ルセフ大統領は数日中に職務が停止されることになり、現地では、8月のリオデジャネイロオリンピックを前に大統領が職務停止に追い込まれるという観測が強まっています。
糾弾に対抗
ルセフ大統領の弾劾を求める動きは昨年、当時のクーニャ下院議長が起こしました。再選のかかった2014年の大統領選挙を前に、国営銀行から資金を借りて国家財政の赤字を穴埋めし、社会福祉政策を行ったのは違法だということです。
ルセフ大統領の停職期間中はテメル副大統領が職務を代行します。180日の間に捜査が行われ、11月に弾劾手続きは上院の特別委員会の手に委ねられます。大統領には20日間にわたって自己弁護の機会が与えられ、特別委員会の投票を経て上院本会議で投票が行われます。ここで3分の2が弾劾を支持すれば、ルセフ大統領の失職が決まります。
ルセフ大統領は、「この弾劾手続きはクーデターだ」という主張を繰り返しています。ルセフ大統領の支持者らも各地でデモを行い、「弾劾手続きはクーデターだ」と非難しています。サンパウロで10日に行われたデモでは、支持者たちがタイヤに火をつけ、道路を封鎖しました。
ルセフ大統領の糾弾に反抗するデモ参加者=ロイター
カルドザ司法長官は、権力の乱用によって弾劾手続きを操作したとクーニャ前下院議長を非難し、10日に最高裁判所に弾劾審議の無効を申し立てました。司法長官は訴状の中で、「クーニャ氏は恥知らずにも、大統領や、政府、党への報復のために行動している。明らかな復讐だった」と述べました。
度重なる困難
ルセフ大統領のスキャンダルをめぐっては、「景気低迷を招いた労働者党政権の終焉との期待感が国民に高まり、1930年代以来の大不況とされる同国経済が持ち直す皮肉な現象も起きています。マイナス3・8%の成長率を記録した昨年は、通貨レアルも3割超下落しました。
しかし、連邦議会での弾劾手続き開始が濃厚となった今年2月以降、1割ほど上昇に転じ、同国の主要株価も好感して下げ止まりました。
こうした中、テメル氏率いる暫定政権の政治基盤が脆弱(ぜいじゃく)で、本格的な構造改革や政策転換が望めないことから、今後も不安定な状態は続けるとの見方が強いです。混乱が収まるのは、2018年に予定される次期大統領選の結果次第との指摘もあります。