(VOVWORLD) -メルケル首相は29日、今年12月の党大会において、党首選挙に立候補しない意向を示すとともに、首相として2021年の任期満了まで務めたあと、政界から引退する考えを明らかにしました。
メルケル首相=Getty |
金融都市のフランクフルトがあるドイツ中部ヘッセン州で、10月28日に行われた議会選挙では、メルケル首相が率いる「CDU=キリスト教民主同盟」が得票率を大幅に落とした一方で、難民の受け入れに反対する右派政党が躍進しました。
この結果を受けて、メルケル首相は29日、今年12月の党大会において、党首選挙に立候補しない意向を示すとともに、首相として2021年の任期満了まで務めたあと、政界から引退する考えを明らかにしました。
予想通りの結果
メルケル首相の政界引退は、驚くに与えしない結果です。というのは、実際、2017年9月に行われた連邦議会選挙でメルケル首相とキリスト教民主同盟の威信は大幅に低下したからです。その時に、メルケル首相は4期目を保ち、また、CDUは州議会第1党として維持しましたが、選挙結果はCDUにとって70年ぶり最悪の結果となりました。その一方で、排外主義政党「AfD=ドイツのための選択肢」は同州で初議席を獲得し、議会入りを果たしたということです。
当時に、多くの国際政治家や、分析者らは、ドイツ政界が新しい不安定な時期に入ると予測しました。2000年にキリスト教民主同盟党首に就任し、2005年の総選挙に勝って首相となったメルケル女史は、常に「世界最強の女性」という地位を保っています。メルケル女史は首相就任以来、ユーロ圏危機や難民・移民問題など、欧州の様々な難局への対応で主導的な役割を果たしてきました。メルケル首相は難民受け入れ政策を実施したことで、アメリカの雑誌『タイム』誌から2015年版の「今年の人」に選出されました。しかし、2015年の難民受け入れ決定で判断を誤って以来、政治力を徐々に失ってきたと指摘されました。2014年以来、ドイツに流入した難民の数は150万人を超え、テロ事件や難民宿泊施設への放火などの社会不安をもたらしました。それらの影響で、昨年の総選挙でCDUは多くの議席を失い、難民受け入れに反対する右派政党の躍進を許しました。
独とEUへの将来?
党首選挙でメルケル首相に批判的な候補が選ばれるならば、メルケル首相の政権運営は一層難しくなり、任期を全うできなくなるおそれも出てくることから、党首選挙の行方に注目が集まっています。
メルケル首相は、党首を退くことによって政権内での求心力の低下は避けられないとみられます。欧州は今、難民や移民への厳しい対応を求める右派政党が支持を伸ばしていますが、メルケル首相は人道主義を重視する姿勢を示してきました。またイギリスがEUからの離脱を決め、各国でもEUに反発する勢力が台頭する中、EUの統合を深めようとけん引役を担ってきました。さらにアメリカのトランプ大統領が掲げるような自国第一主義は他の国々にも広がりつつありますが、メルケル首相は、温暖化対策や自由貿易の推進などで国際協調の重要性を訴えて調整に当たってきました。
それだけに、メルケル首相の求心力の低下はドイツだけでなく国際社会に大きな影響を与える可能性があります。