(VOVWORLD) - 米ロ関係の緊張が続いていおり、まだ、回復の兆しが見えていません。
アメリカ下院は25日、ロシアによるアメリカ大統領選への干渉や、ウクライナ東部への武力介入、シリア問題をめぐり、対ロシア制裁を強化する法案を賛成419、反対3の賛成多数で可決しました。これは、ロシアのプーチン大統領とアメリカのトランプ大統領が始めたばかりの両国関係回復に多くの困難をもたらします。
法案は、ロシアの石油・天然ガス関連企業や、昨年の大統領選中に起きた米民主党へのサイバー攻撃に関与したとされる個人らに追加制裁を科す内容で、既存の制裁についても、解除・緩和する場合は議会の承認を義務づけます。
深刻な矛盾
2014年3月のロシアによるクリミア半島の編入問題で、両国関係の緊張は増しています。アメリカとEU=欧州連合はロシアに対する複数の制裁措置をとってきました。これにより、両国関係は冷戦後の最悪レベルに達しています。
こうした中、トランプ氏が大統領となっていることは両国関係の改善にチャンスを与えるものと見られました。トランプ大統領は、ロシアの核兵器削減に関する合意を達成することや、ロシアが反テロ戦でアメリカを支援することなどを条件として、対ロシア制裁の撤廃や、関係改善を検討すると言明したからです。
一方、プーチン大統領もアメリカと対話する意向を表明しました。しかし、現在は両国関係が悪化しています。その原因はロシアによるアメリカ大統領選への干渉とサイバー攻撃に関する告発や、双方の報復措置などです。特に、プーチン大統領は6月30日、アメリカとEUの農水産物輸入禁止を2018年12月31日まで延長する大統領令に署名しました。
また、シリア問題もその要因の1つです。アメリカ軍がシリア政府軍の戦闘機を撃墜したことに対し、ロシア側は猛反発し、「今後はシリア西部を飛行するアメリカ軍機を追跡し、シリア上空での衝突回避のために2015年に設置したアメリカとの通信を遮断する」と発表しました。
さらに、双方の意外ですが、7月4日に行われた朝鮮民主主義人民共和国のミサイル発射実験も米ロ関係に暗い影を落としています。
関係改善を目指し、トランプ大統領とプーチン大統領は今月7日、ドイツのハンブルクで行われたG20サミットの際に、初の首脳会談を行いましたが、会談後に出されたロシアとアメリカの高官らの発言は、双方がこの会談の結果に満足していることを示しました。また、この会談は、対話したいという両国の姿勢を表わすものでもあります。
実施しにくい目標
しかし、アメリカの現在の体制と政策により、ロシアとの関係改善は容易ではありません。トランプ大統領は共和党出身であるため、ロシア制裁継続を支持する同党の綱領に逆行することができません。
また、25日に可決されたアメリカ下院の法案が既存の対ロシア制裁を解除・緩和するために議会の承認を義務づけることも大統領権限を制限するものです。この法案に関し、ロシアと幾つかの欧州諸国は、「これは両国関係をさらに悪化させる」と警告しました。
ロシアの高官は、「法案は米ロ関係正常化のプロセスに非常に悪い影響を与えている」と強調し、「近い将来の関係正常化の可能性は閉ざされた」と非難しています。