(VOVWORLD) - この数日、イギリス・ロシア関係の悪化は国際世論の注目を集めています。イギリス政府がロシアの外交官23人の国外追放を決定したことなどにより、両国の間には、この数十年間で最悪となる外交危機が発生しています。
その緊張関係は二重スパイの襲撃事件をめぐるものです。事件は今月4日、イギリス側の二重スパイでありロシア連邦軍参謀本部情報総局のセルゲイ・スクリパリ元大佐と娘がイギリス南部ソールズベリー中心部のショッピングセンター前で意識不明で見つかりました。この2人は現在も病院で重体が続いています。
ロンドン駐在ロシア大使館(写真:Getty) |
複数の制裁措置
これに関し、14日、テリーザ・メイ首相はイギリス駐在ロシア外交官23人を国外追放すると発表しました。今回の国外追放は、1985年に元ロシア将校オレグ・ゴルディエフスキー氏の亡命後に31人が追放されて以来、最大規模となっています。
メイ首相はロシアに対し、13日深夜までにこの件に関して協力するよう求めていました。この期限が守られなかったため、ロシアへの「明確なメッセージ」となるさまざまな措置を発表したとしています。
中でも、外交官23人を国外追放するほか、民間航空機・税関・貨物に対する検査の拡大、イギリス国民や在イギリス外国人の生命や資産を脅かす可能性のあるロシアの国有資産の凍結、今年にロシアで開催されるサッカー・ワールドカップへのイギリス王家と閣僚の不参加、予定されていた政府高官レベルの協議の延期、敵対国の活動に対する新法策定などの措置も断言しました。
追放する外交官についてメイ首相は、「未申告の情報将校と確認された」としています。メイ首相は下院で、「なぜイギリスでロシア製の神経剤が使用されるに至ったのか、ロシアは何の説明もしなかった」と述べました。
二重スパイの襲撃事件の現場(写真:ロイター) |
一方、ロシア外務省は声明を出し、メイ首相の発表を「前例にないほど無礼な挑発だ」と批判しています。声明で、「イギリスがあらゆる敵対的措置で相当に凶悪な外交関係を求めてきたことは断固として受け入れられず、その価値もない」としました。
また、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、「イギリスから化学兵器禁止条約に基づいた正式な要請を受ければ、協力する用意がある」と語りました。
イギリス・ロシア関係の将来?
実際、両国に緊張関係が生まれたのは2002年からです。そして、2006年はじめからさらに複雑化しました。当時の争点は、ロシア連邦保安局の元幹部アレクサンドル・リトビネンコ氏の殺害事件でした。政治関係の緊張が続くにもかかわらず、経済関係は積極的に発展しています。
2017年におけるイギリス・ロシア間の貿易額は120億ドルを超え、前年と比べ、およそ23%増加しました。こうした中、EU=欧州連合離脱後の通商関係を改善したいイギリスはロシアに対する次の措置を考慮せざるを得ないと評されています。また、多くの国は、今回の危機に対し、慎重姿勢を示しており、両国が対話を行うことを望んでいます。
世論は、「イギリス・ロシア間の外交危機はすぐ解決できない」と指摘しながら、「この危機はこの両国だけでなく、国際政治関係にも被害を与えることから、関係者が事態収束を図るために、柔軟な措置をとるよう」期待しています。