ボーイングの工場を訪れている習近平国家主席(写真:ロイター)
中国の習近平国家主席は日本時間23日午前、アメリカ西海岸シアトルに到着し、国賓としてのアメリカ訪問を開始しました。この訪問は国際世論の特別な注目を集めています。中国とアメリカとの関係には多くの対立が残されている背景の中で、この訪問は両国関係に大きな突破口を切り開くことができないとされています。
信頼醸成に関する問題解決
習主席は2013年6月にアメリカのカリフォルニア州でオバマ大統領と会談し、アメリカに「新型大国関係」の構築を呼びかけました。今回のアメリカ訪問に行われる米中首脳会談を前に、日本との同盟強化などアジア太平洋地域への「リバランス(再均衡)」を進めるオバマ政権に改めて戦略の調整を促した形になります。
現在、アメリカは政府機関や企業へのサイバー攻撃を中国政府が支援していると批判しています。中国によるベトナム東部海域、いわゆる、南シナ海岩礁埋め立てなどに警戒感を強めます。人権問題での隔たりも大きいです。習主席はアメリカ到着後の声明で、米中が『新型大国関係』になることを両国民が望んでいる」とアメリカ訪問の意図を説明しました。対立は米中二国間だけにとどまりません。アメリカはロシアを排除したG7=先進7カ国で結束しました。これに対し、中国はロシアと組んでBRICS=新興7カ国や上海協力機構などの新たな枠組づくりに力を入れます。国際秩序も米中を軸に分断されつつあります。
経済は中心的な議題
習主席がアメリカ訪問を起点にシアトルで演説しました。経済問題では「中国経済は下押し圧力に直面しているが、構造改革などで中高速成長を維持するよう促す」として、景気減速への懸念払拭に努めました。そのうえで「株式市場や為替市場の一時の変動で変わることはない」として、経済分野の改革を進める姿勢を示しました。
先立って参加したアメリカ・中国の知事・省長フォーラムでは「アメリカは世界一の経済大国として大きな市場を持っており、中国は13億の人口を持っている」と話し、世界1位、2位の経済大国として、米中が協力し、互いの経済的利益を探るよう訴えました。
23日に、習国家主席は滞在中、アメリカと中国の企業家座談会と、アップルなどアメリカIT企業と中国のネット商取引最大手「アリババ」などとの米中インターネットフォーラムに出席しました。また、ボーイングの工場、マイクロソフト本社、タコマ市のリンカーン高校を訪問しました。
習国家主席の今回のアメリカ訪問で、双方はサイバー攻撃やベトナム東部海域、いわゆる、南シナ海などに関する問題で一致するのは難しいものの、経済に関しては成果が期待されることでしょう。