ベルギー政府は24日、EU欧州連合とカナダのCETA=包括的経済貿易協定の承認について、同国南部でフランス語圏のワロン地域の同意を得ることに失敗しました。予定されていた27日の協定調印に暗雲が広がってきました。
同協定は、EUが主要7カ国(G7)と結ぶ初めての自由貿易協定となります。2013年にカナダと原則合意しましたが、EU側の調整難航で署名が遅れています。イギリスの離脱決定や反グローバリズムに揺れるEUにとって、27日にブリュッセルで開かれる首脳会談で予定通りに署名できるかどうか持つ意味は重いです。
CETAへの反対
ワロン地域政府は今週、同協定に署名する権限をベルギー連邦政府に与えないと決議していました。協定の調印にはEU加盟28か国すべての支持を得る必要がありますが、使用言語ごとにいくつかの地域に分かれているベルギーの複雑な政治制度の下で連邦政府が正式に承認するには、まず7つの地域議会が、協定に署名する権限を連邦政府に与えなければならないことになっています。
EUは人口350万人の同地域の反対で、FTA自由貿易協定の締結が危ぶまれていることに衝撃を受けています。
EUのFTA締結が暗礁に乗り上げているのは対カナダだけではありません。「世界最大の自由貿易圏」と銘打ったアメリカとの「(TTIP)環大西洋貿易投資協定」も、ドイツとフランスのの国内の反発が強く、来年1月までのオバマ政権下での合意を断念しています。
背景にあるのは、世界的な反グローバル化の流れです。イギリス国民がEU離脱を選んだのは、経済のグローバル化による貧富の格差拡大も一因とみられています。自由貿易市場が広がれば、安価な商品や安い労働力が貿易圏内を移動し、その動きをさらに加速させるとの懸念が強くなっています。
EUに大きな打撃
このワロン危機はEUに多大な影響を及ぼす可能性があり、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(EU大統領)は20日、カナダとの協定締結に失敗した場合、他の協定を締結することもできなくなる恐れがあると警鐘を鳴らしました。
EUのマルムストローム欧州委員は23日にツイートで「欧州委員会は解決策を見いだすために24時間週7日態勢で取り組んでいる」と表明しました。また、「ベルギーが事態を収拾できると期待している」としています。
ベルギーのミシェル首相は、同協定が死んだというにはまだ早いとし、ワロン地域との対話窓口は開いていると強調しましたが、ベルギーはEU加盟の他の27カ国と同じように協定を支持する状況にはないと、トゥスク大統領に報告せざるを得ないとしています。
事態を受けてトゥスク大統領は、ブリュッセルで27日に予定していたカナダのトルドー首相との首脳会談をキャンセルするとみられます。しかし、7年間かけて合意に漕ぎ着けた同協定について双方の関係者は、全ての人々の利益に沿うものだと強調しています。