北極圏進出の競争


アメリカのオバマ大統領は気候変動が北極圏に及ぼす影響などを訴えるため8月31日から9月2日までアラスカ州を訪問しました。しかし、この訪問は、単なる気候変動対策のためではなく、資源が豊富な北極での影響を拡大する狙いもあるとされています。ロシアが北極での影響の拡大を急ぐ中、オバマ大統領の今回のアラスカ州訪問は、アメリカが北極を支配する競争に参加する用意があるというメッセージを伝えたとみられています。


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大国の注目を集めている北極圏(写真:Khoahoc)

大国間同士の競争

地球温暖化で、海水温が上昇するのに伴い、北極の海氷は減少し続けています。アメリカ航空宇宙局(NASA)によりますと、1970年代後半以降、北極の海氷は10年で12%のペースで後退しており、そのペースは2007年以降さらに悪化しています。これは、人類が直面する最も深刻な環境問題です。北極海では気候変動の影響とみられる海氷減少によって資源開発や航路開拓などが期待されています。

ここ数年、ロシアは北極圏での影響を拡大しつつあります。2014年、ロシアのプーチン大統領は、今後5年間で北極圏開発プログラムに42億ドルを投資することにしました。ロシアは繰り返し北極圏での領有権拡大を主張してきました。最近では8月にも、エネルギー開発をめぐり、海岸から約650キロメートル沖までの約120万平方キロメートルの大陸棚をロシアの領海とする提案書を、国連に提出していたことが明らかとなりました。

ロシアは北極で軍拡を進めています。今年の3月、ロシアは、4万人の兵士と数十隻の艦船が参加した大規模な軍事演習を北極で行いました。ロシア のセルゲイ・ショイグ国防相は8月31日、戦闘機と地対空ミサイルを2015年末までに北極圏の軍事施設に配備すると発表し、同国最北の海軍施設に防空能力を加えるとしています。今回の動きは、北極での戦闘訓練を受けた自立可能な部隊、いわば「北極軍」を2018年までに設立する、より大きな戦略の一部でもあるとみられています。

北極海に領海を持つのは、ロシアのほか、アメリカ、カナダ、ノルウェー、デンマークなど北極海に領海を持つ国は北極圏での開発を急いでいます。北極圏での開発には沿岸国以外の中国の関心も高まっています。中国政府は以前から「中国は北極圏近隣諸国である」と主張し、同地域開発の中心的存在である「北極評議会」の常任オブザーバーになりました。


北極圏での競争はどうなる

北極圏には世界の未発見原油の10%、天然ガスの30%が眠っているといわれている。また、欧州とアジアを結ぶ最短ルートでもある「北極海航路」は国際貿易航路になる公算も高いとみられています。

北極圏での競争では、ロシアはアメリアより優位になっています。アメリカのオバマ大統領はアラスカ州訪問で、ロシアは40隻の砕氷船を保有する一方、アメリカは3隻にとどまると指摘しました。地球温暖化による海氷縮小で、北極圏の洋上交通が活発化する状況に備えるべきだと述べました。アメリカ政府は大統領のアラスカ訪問に合わせ、退役する重砕氷船の代替艦を2022年から20年に前倒しして調達することを目指すと発表しました。砕氷船の追加建造計画の策定にも着手します。

中国も砕氷船の造船を進めており、ロシアと連携して北極圏での影響を拡大しようとしています。2014年、ロシアと中国が北極海航路の拠点となり得る港湾を共同建設する計画が明らかになり、ロシアが国策とする北極開発でも中国との連携を深める姿勢が浮き彫りになりました。こうした競争はこれからも激しくなるとみられています。

 

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