IAEA=国際原子力機関が「イランは2015年7月に達成された核合意を履行している」と発表したことを受け、この数日、日本や、欧米諸国はイランに対する制裁解除を進めています。一方、イランも、そのメリットを活用するために国際社会への参入を促進しています。
(写真:sputniknews)
アメリカ・オバマ大統領は17日、核開発に関連してイランに科してきた経済制裁の解除に関する大統領令を発動しました。欧米が制裁を解除することで、イランは、凍結されてきた国外資金を手にするほか、原油の輸出も可能になります。ホワイトハウスは、資金凍結の解除によるイランへの効果を約500億ドルと見ています。
メリットを活用
実際、昨年7月から、イランは、核合意による経済制裁解除のメリットを活用するために複数の措置を積極的に取っています。まず、原油輸出の促進です。
暫定のタンカー積みスケジュールのデータによりますと、イランの2月の原油輸出は日量約144万バレル、1月は約150万バレルとなる見込みです。これは昨年の1日当たり平均の20%を上回る水準となっています。また、イラン政府は日量50万バレルの増産を指示しています。そして、観光も重要な産業と見なしています。
同国は、毎年、2000万人の外国人観光客を引き付けるという目標を掲げ、入国ビザ制を緩和するなどして、目標達成のために力を入れています。
経済関係拡大
同時に、各国との投資、貿易協力の強化も視野に入れています。イランのロウハニ大統領は2日、「アメリカ企業がイランに投資したり、合弁事業を設立したりすることに問題はない」と表明し、海外からの投資を呼び掛けたうえで、石油依存から脱却して産業多角化を目指す姿勢を示しました。
これに先立つ1月下旬、ロウハニ大統領はフランスを訪問し、フランスから旅客機を購入することや、両国で自動車の共同生産を行うことなど、幅広い分野で合意しました。イランに対する制裁が解除されたことで、イランの市場や資源を狙い、各国の競争が激しさを増すなかで、今回、いち早くイラン側と各種の契約に至ったことについて、フランスの経済界からは歓迎する声が上がっています。
一方、イタリアや、スウェーデンなど欧州経済界にも、イランとの取引増加に期待を寄せています。そして、既にドイツや、イギリスなどが経済協力の動きを強めています。
こうした中、アナリストらは、「35年間敵対関係が続いていたイランと欧米は新しいページを切り開いた」としています。政治と外交の面では、中東地域の大国であるイランは経済制裁の解除を利用して、自国の威信と発言力が高められます。こうした制裁解除は、イランにとって大きな節目になったといえるでしょう。