欧州は難民問題に苦悩している
地中海の島国マルタでは11日、EU欧州連合加盟28カ国とアフリカの30カ国余りの首脳らが参加する会議が2日間の日程で始まりました。
欧州に流入する中東やアフリカからの難民や移民は、今年すでに80万人近くに達し、その4分の1を占めるのがアフリカ出身者のほか、アフリカを経由して欧州を目指す人が後を絶ちません。
今 回の首脳会議で、EUはアフリカ各国に対し、難民や移民を生む原因となる貧困や治安問題を解消するため、少なくとも19億3000万ドル援助を表明する 一方、経済的な目的で渡ったアフリカ出身の移民を本国に送還する措置への協力や、密航業者の取締りなどで連携を求めています。
難民政策を巡るEU内の対立
難民問題を巡ってEU加盟28カ国の首脳は過去にも5回の会合を開催してきました。しかし、これまでに打ち出したのは断片的な対応にとどまり、混乱が続いています。EU各国政府はすでに、シリア難民向けに23億ユーロ(25億ドル)規模の支援などを表明しています。しかし、ドイツやオーストリアなど、一部の国では、国境で難民の流入を制限しようとする動きがみられます。
中東などから欧州に難民が大量に押し寄せている問題で、スロベニアは11日、国境に越境防止柵の設置を始めました。また、ドイツ内務省は10日、EU入りしても難民申請しないままドイツ に入国したシリア難民を最初に到着した国に送り返す「原則」の適用を再開すると発表しました。ギリシャなどでの登録を促し、難民を他の国に送り込む狙いがあります。一方、EUでは最初に入った国で難民申請する大原則がありますが、ドイツは今年8月、人道的見地からシリア難民への適用を除外しました。メルケル独首相の報道官も9日、難民が家族を呼び寄せることは「当面あり得ない」と述べました。ハンガリーは、クロアチアとの国境約330キロに有刺鉄線付きの「越境防止フェンス」を設置しています。
足並み揃わず
現時点において、欧州における難民問題には有効な解決策が見出せないというのが現状です。難民の受け入れを拒否する大多数の国は、経済的にも社会的にも困難を抱えています。また、殆どの難民はシリアとアフリカからのイスラム教徒である一方、欧州諸国の政府と国民は、自国の中に大勢のイスラム教徒を受け入れる用意がないということです。それに、多数の難民らを受け入れた国に貧困や紛争、政情不安などをもたらす恐れもあります。
こうした背景の中で、今回の移民・難民問題を話し合うEUとアフリカ諸国の首脳会議では、実施可能な方策が達成できるか否かは期待されていないのです。多くの国は、難民を受け入れた場合、EUの将来に懸念を表明しています。