7日、ベルギーの首都ブリュッセルでEU=欧州連合28カ国とトルコの首脳らは会議を行い、欧州に難民や移民らが押し寄せている問題について協議しました。欧州への流入を抑制するためにはトルコの協力が不可欠ですが、協議は難航し、最終合意には至りませんでした。EUとトルコは17日に再協議し、最終的な対応策をまとめる方針です。
なかなか実施できないトルコの要求
前回、去年11月の会議でEU側は、トルコが国境管理や密航業者の取り締まりを強化する代わりに30億ユーロ、日本円で約3700億円の支援を行うことなどを提示していました。今回の首脳会議で、トルコ側はさらに、支援金額の倍増などを要求しました。提案にはこの他、トルコがギリシャの島々からシリア難民1人を引き取るごとにEUがトルコからシリア難民1人を受け入れるという「難民交換」や、EUがトルコ国民に対する査証(ビザ)免除措置の導入を今年6月に前倒しすること、トルコのEU加盟手続きの迅速化も含まれています。第2次世界大戦以来最大の移民危機への対応でトルコの協力を得るためにEUが支払う代価は、増加の一途をたどっています。ただギリシャの島々を目指す人々の主な出発地がトルコである以上、トルコに頼る以外の選択肢はほとんどないのが実情です。EUは昨年11月、トルコの今年と来年分の協力の見返りに30億ユーロの資金援助を行うことに合意していましたが、4か月後の現在もまだ支払われていません。トルコのレジェプ・タイップ・エルドアン大統領は7日、首都アンカラで行った演説で支払いの遅れについてEUを批判しました。
ブリュッセルでの首脳会議を終えたルクセンブルクのグザビエ・ベッテル首相は8日、来週末のEU首脳会議までにトルコ側と妥結することを目指し、作業を進めていくことで、EU側が同意したことを明らかにしました。
違法難民をトルコへ強制送還することで大筋合意
他方、EUとトルコの首脳らは、トルコから違法にギリシャに渡る難民は、全てトルコに強制送還することなどで大筋合意しました。トルコから密航業者の手をかりて不法にギリシャにわたる難民をトルコに送り返す一方、トルコ領内で正規の手続きを取ったシリアなどからの難民については、直接、EUに移住させることで基本合意しました。違法シリア難民1人の送還につき、シリア難民1人をEUが受け入れるということです。
トルコのダウトオール首相は「密航を思いとどまらせ、正規の移住を促すことが目的だ」としています。またトルコは、難民対策での協力と引き換えにEUからの支援金を倍増させることや、将来のEU加盟交渉を加速するよう求めました。流入する難民の数を抑制したいEUと、EU加盟を目指すトルコの思惑が一致したともいえ、EUは今月17日から始まる首脳会議で最終合意を目指しています。