5日、ブリュッセルで、EU欧州連合と国連は、シリアの和平協議を共催します。2日間にわたって行われる今回の協議では、シリアの和平回復について話し合われますが、合意に至るのは難航すると見られています。
7年目を迎えたシリア内戦による死者は40万人にのぼっているほか、難民が500万人を越えており、ヨーロッパに最悪の難民危機をもたらしています。この1年、シリアの和平回復を目指す多くの会議が開かれましたが、合意に達成できず、亀裂しました。その要因の一つに、西側諸国がシリアのアサド大統領の退陣に固執するのに対し、ロシアの支援により、アサド政権は戦場で圧倒的優位に立っています。
アサド大統領(写真:ロイター)
米欧の隔たりが鮮明
しかし、アメリカ大統領のスパイサー報道官は3月31日の記者会見で、オバマ前大統領がシリア和平のため求めてきた同国のアサド大統領の退陣に関し、「シリアの将来はシリア人が決める。受け入れられなければならない政治的現実がある」と述べ、イスラム教過激組織「(IS)イスラム国」掃討を優先するため前政権の政策を転換すると表明しました。
前日の30日には、アメリカのティラーソン国務長官が訪問先のトルコで「アサド氏の長期的な地位はシリア国民が決めることだ」と発言しました。同日、アメリカのヘイリー国連大使も「われわれの優先課題は、もはや腰を据えてアサド氏を追放することではなくなった」と述べました。
その一方で、EU欧州連合は3日、ルクセンブルクで外相理事会を開き、内戦が続くシリアのアサド政権の退陣を求める立場で一致し、シリアをめぐる米欧の隔たりが鮮明になりました。
ますます混迷を深めるシリア情勢
シリアへの対応についてアメリカの政策転換を受け、アサド大統領退陣を求めてきたシリア反体制派からは反発の声が上がっています。シリア反体制派の幹部は「いかなる段階でもアサド氏の役割を認めるわけにはいかない。我々の立場に変わりはない」と強調しました。フランスのデラットル国連大使も「アサド氏がシリアの未来ではないし、そうなることもできない」と述べました。
これまでのシリア内戦の和平協議は何回も行われましたが、アサド政権と反政府勢力の対立は解決していません。今回、アメリカが政策転換を示していることが協議の結果に与えるかどうかはまだわかりませんが、シリア内戦の和平回復はまだ難航していると見られています。