既にお伝えしましたように、領海紛争問題をめぐって、先ごろ、中国とASEAN=東南アジア諸国連合は法的拘束力を持つCOC=海上行動規範の枠組み草案を2017年半ばを目標に作ることで合意しました。この海域での中国の権益主張を退けた7月の常設仲裁裁判所の判決後、中国はこれまで消極的だったCOCの枠組み草案作成に前向きな姿勢を示しました。
中国とASEANは2010年に、海上での行動規範の作成について討議し、そして、2013年に、この法的文書に関する対話を行いました。しかし、海上での情勢の緊張などにより、これまでもその制定は進展を見せていません。
(写真:
Xinhua)
協調の達成
ラオスの首都ビエンチャンで行われたASEAN外相会議の直後、中国とASEANは8月15日と16日の両日、中国の内モンゴル自治区満州里で、ベトナム東部海域(いわゆる南シナ海)問題を巡る高級事務レベル会合を開き、法的拘束力を持つCOC=海上行動規範の枠組み草案を2017年半ばを目標に作ることで合意しました。双方は会合で、海上で不測の事態に対応するためのホットラインの運用指針と衝突回避ルールの導入でも合意し、9月上旬にラオスで開かれる中国・ASEAN首脳会議で正式承認されるとしています。
また、地域の平和、安定の確保へ向けて、DOC=海上行動宣言の履行を継続し、紛争を交渉を通じて平和的措置で解決することなどでも一致しました。中国の劉振民外務次官は会合後の記者会見で、「外部勢力の妨害で海上での状況はより複雑になっている。問題解決の鍵を自分たちの手で握らなければならない」と語りました。
積極的な兆
ベトナム東部海域での緊張がエスカレートしている背景の中で、ASEANはCOCを早期に制定する必要があるという自らの終始一貫した立場を示してきました。COCは拘束力があり、海上での関係各側の行動に関する規定を定め、1982年国連海洋法条約を始め国際法に従って衝突を平和的措置で解決することに役立つものとしています。
また、これは中国・ASEAN協力関係のの強化にも寄与すると評価しています。しかし、2013年から、中国側は数回にわたりその交渉を延期しました。そのため、今回、中国とASEANがCOCに関する合意を達成したことは世論の特別な注目を集めています。
アナリストらは、「オランダ・ハーグにある常設仲裁裁判所がベトナム東部海域の領有権をめぐりフィリピンが中国を提訴した裁判で、“中国にはこの海域の島々に対する歴史的権利を主張する法的根拠はない”とする裁定を下した後達成されたこの合意は海上紛争解決に対する善意を示すものである」と評価しています。中国の劉振民外務次官も、「この合意は中国とASEANの成果である」としています。
実際、ベトナム東部海域での緊張情勢は関係各側に予断できない深刻な被害をもたらす可能性があります。こうした中、中国もASEANもCOCの重要性を十分に認識しています。したがって、この10年間に活用されてきたDOCの代わりに、拘束力のあるCOCが早期に制定されることが期待されています。