16日、EU欧州連合の指導者らがスロバキアの首都ブラチスラバに一堂に集まります。スロバキアサミットは、イギリス抜きで開催される最初のEU首脳会議になります。今回の首脳会議は、欧州がイギリスのEU離脱(ブレグジット)問題に取り組むなか、行われるもので、イギリスの離脱決定を受けたEUの将来像について協議する見通しです。
主な議題
EUのトゥスク大統領は、イギリスのEU離脱に関する交渉はイギリスが正式に離脱を宣言するまで行なわないとの立場をあらためて強調し、「首脳会議でイギリスに対する交渉戦略を協議する計画はない」と述べましたが、16日の首脳会議では、「イギリスの離脱決定は、EUにとり政治的にどのような意味があるのか話し合う必要がある」と指摘しています。
また、トゥスク大統領は、難民問題を迅速に解決することの重要性を強調し、今回の首脳会議で難民問題の解決策を見出すよう加盟国に呼びかけました。
一方、14日、ヨーロッパ議会で、EUのユンケル委員長は、イギリスのEU離脱について「EUの崩壊の始まりと懸念を示す声もあるがそのようなリスクはない」と述べ、EUが政治・経済の統合を進める方針に変わりはないことを強調しました。
難民問題について、ユンケル委員長は、移民・難民対策ではアフリカや近隣諸国への支援を強化すると明らかにし、新たに440億ユーロ規模の対外投資プランを表明しました。そして、EU加盟国の協力を得て最大880億ユーロの投資を目指す考えも打ち出しました。さらに、多数の移民や難民の出身地となっている北アフリカや中東の安定へ支援を拡大し、安心して自国で暮らせる環境づくりの後押しをし、移民・難民問題の解決につなげたいとの考えを示しました。
防衛協力拡大は今回の首脳会議の主な議題の一つになる見通しです。ユンケル欧州委員長は、EU共通の「欧州司令部」を設ける必要性を強調し、EU部隊の欧州域外での平和維持などの作戦を統括させたいとの考えを示しました。EU全体としての防衛分野の研究開発や技術革新を加速させるための「欧州防衛ファンド」創設を年末までに提案する方針も示しました。
欧州への難民の流れ
EU内の亀裂?
しかし、難民問題などはEU内の団結を脅かしています。ユウケル欧州委員長は、「連帯が問われている中で、ポピュリズムが横行し、EU内に亀裂や分断が生まれているのは確かだ」とも述べ、イギリスの離脱や難民問題などを受けて、各国で反EUを掲げる勢力が躍進していることに強い危機感も示し、一層の結束を呼びかけました。
こうした中、13日、ルクセンブルクのアッセルボルン外相が13日、難民問題などでのハンガリーの対応を巡り「一時的にEUから排除する必要がある」と述べました。ハンガリーについて「戦争を逃れてきた人が動物以下の扱いを受けている」と批判し、報道の自由や司法の独立も侵されているとし、「EUの基本的な価値が侵害されている」と述べました。
これに対し、ハンガリーのシーヤールトー外相は地元通信社への声明でアッセルボルン氏を「説教じみてもったいぶった、欲求不満な人物」と酷評しました。難民受け入れ拒否についても「ハンガリー人には、誰と一緒に住みたいかを決める権利がある」と激しく反発しました。
今回のEU首脳会議はEUの将来像を決めるという重要な役割を果たすと見られていますが、会議の成功は加盟国の大きな努力を求めています。