これまで、EU=欧州連合とトルコとの関係は多くの問題を抱えてきましたが、この数日、その緊張が高まっています。双方間の信頼不足や、相互疑惑などにより、国際問題解決などのための双方の協力を妨げています。
(写真;ロイター)
先ごろ、欧州議会はトルコとのEU加盟交渉の中断を欧州委員会と加盟各国に求める決議を賛成多数で採択しました。この決議は、7月のクーデター未遂事件以降にトルコ当局がとった「不適切な弾圧的対応」を強く非難しました。
関係悪化
これを受け、トルコのエルドアン大統領は猛反発し、シリア難民らが再び欧州に流れるよう国境を開放する可能性を示唆しました。エルドアン大統領はイスタンブールで行った演説で、「よく聴きなさい。これ以上事を進めるなら国境を開放する、そのことを心に留めておきなさい」と述べました。また、7月のクーデター未遂から続く非常事態が、少なくとも3カ月間延長されるとの見通しを示しました。特に、「EUはトルコの内政に干渉する権限がない」と強調しました。トルコはEUへの加盟を申請したのは1987年ですが、交渉は2005年に始まり、トルコ国内の人権問題などを理由に事実上いったん停止していました。昨年の難民危機を受け、トルコが欧州への難民流入の抑制に協力する見返りに、加盟交渉を加速させることで合意しましたが、クーデター未遂後、EUが同国政府の強権的な対応を非難したことで、関係に緊張が続いています。また、3月の難民合意では、6月末までにトルコ人のビザ免除を開始するとEUが約束しながら、実現していません。これに対し、エルドアン大統領は強い懐疑心を隠しません。
深刻な影響
特に、エルドアン大統領は20日、 「EU加盟のために犠牲を払う必要はない」と述べ、EUの代わりに中国、ロシア、中央アジア諸国で構成されるSCO=上海協力機構に加わる可能性を示唆しました。大統領は同行した記者団に対し、「トルコは気兼ねすべきではない。是が非でもEUに加盟したいと要請すべきではないというのが私の見解だ」と語りました。
エルドアン大統領
(写真:EPA)
その上で、「上海ファイブにトルコが入ってはどうだろうか。ロシアのプーチン大統領とカザフスタンのナザルバエフ大統領にこの件を聞いてみた」と発言し、「前向きな動きがあり、トルコが上海ファイブに加わる場合、トルコははるかに大きな安心感を持って行動できるようになる」と述べました。これに対し、中国外務省の耿爽(こうそう)副報道局長は21日の記者会見で、「SCOとの協力を強化したいというトルコの希望を重視している」と述べ、今後検討していく考えを示しました。
こうした中、アナリストらは、「難民問題解決におけるトルコの重要な役割と地理的地位から見れば、トルコのSCO加盟は欧州に不安をもたらす恐れがある」と指摘しています。それに加えて、最近トルコとロシアとの関係は著しく改善されています。これらの要素により、今後、EUは多くの問題に直面すると予測されています。