ホアイ こんにちは、ホアイです。
ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りはベトナムの少数民族チャム族によって建設された神様を祀る塔(いわゆるチャム塔)についてお伝えします。
ホアイ はい。まずはチャム族についてご紹介します。多民族国家ベトナムには多数民族であるキン族の他、53もの少数民族がベトナムの各地に点在しています。その中でも大規模を誇る少数民族の一つがチャム族です。
中部カインホア省にあるチャム塔「ポナガル」
ソン チャム族は人口16万人を超え、ベトナム中南の部ニントゥアン省とビントゥアン省に集中しているほか、フーイエン省、ビンディン省、南部アンザン省、テイニン省、ホーチミン市、そして、カンボジアにも散在しています。
ホアイ チャム族はアウストロネシア(マレー・ポリネシア)語系に属し、マレー、インドネシア系の民族です。同じマレー系の民族の中には、メラネシア人やミナンカバウ人が母系制であることで知られていますが、チャム族も母系制度です。
ソン チャム族は2世紀から17世紀頃までベトナム中部で栄えていたチャンパ王国の末裔として知られています。史料上では192年にベトナム中部のフエ付近で自立しました。4世紀にはインド化の波がベトナム中部にも及び、ヒンドゥー教が取り入れられていました。
ホアイ インド化した結果、チャム人たちは自らをインド語派に属する古代語サンスクリット語でチャンパー王国と自称するようになりました。宗教は主にヒンドゥーシヴァ派ですが、それにとらわれることなく、インド文化を柔軟に取り入れてたとされています。チャンパ王国が謳歌(おうか)した時代は当時のベトナムよりも高い技術力を持っていたと言われており、その理由は交易にあったと言われています。海沿いに王国を築いたチャンパ王国は中国やインド、オランダなどの欧米まで交易の手を広げ、レベルの高い建築技術を取り入れていたと考えられています。
チャム族のお祭り
ソン チャンパー王国は南に勢力を伸ばして現在のダナンの西方にヒンドゥー教の聖地ミーソンを建設しました。現在、ミーソン遺跡にはレンガ作りのチャム塔など7世紀から13世紀にかけての遺構が残っていますが、1999年に、ユネスコに世界文化遺産として認定されました。
ホアイ こうしたチャム人は、ミーソン聖地と同じように、建築と彫刻に優れた造形美を発揮し、中部から南部に多くの遺跡を残しています。その宗教建築の特徴はレンガを主要な材料としていることで、土・水・火という三つの根源的な物質から変化してできるレンガによって神を祀る祠堂を作るという信仰にもとずいていました。
ソン チャム塔はチャム族の建築・美術の結晶であり、この民族の宗教・信仰・習慣などを示すものでもあると評されています。現在、ベトナムにはおよそ50のチャム塔が残っており、中部沿海各省に点在しています。建設されてから5~600年を経た塔があれば、千年の歴史を持つ塔もあります。
ホアイ チャム塔はバラモン教の神様を祀るところで、常にとがっている塔の先は神々が住みつくところです。カンボジアのアンコールワット遺跡などは石を組み合わせで建てられた一方、チャム塔は煉瓦で組み建てられています。模様は煉瓦に彫刻されていますが、建築様式としては珍しいものです。ベトナム考古学研究所のレー・ディン・フン博士は次のように語りました。
(テープ)
「チャム族の建造物はほとんど、丘などの高知に建てられました。チャム族の信仰では、塔は神の住む場所で人々が住む場所と分けなければならないとされていたため、殆どが丘の上に建てられ、正門は日が昇る東向むになっています。」
チャム塔の中
ホアイ 伝統的なチャムの塔は正方形で、多層になっていて、 四角の本体ブロックと曲線のピラミッドという2つの部分から成ります。塔の各隅々には両手を上げて塔の屋根を支える神聖な「神の鳥」といわれるガルーダがあります。
ソン 壁面に施された装飾はチャム塔の特徴の一つです。ここが900年の歴史を持つチャンパ王国のその時々の勢力の盛衰を反映して、装飾が細かくなったり簡素になったりと、様々な変化を見せています。それぞれの塔の装飾を見ると、その塔が建設された時代の流れがわかると言われています。
ホアイ チャム塔の中に入ってみると、これらの塔が柱や棟柱を使わずに建てられていることに気が付くでしょう。そのため屋根はレンガを少しずつ、ずらして作られています。これもチャンパ建築様式の特徴の1つです。
ソン 研究者らがおよそ50のチャム塔を研究した結果、チャム塔は地元で製造された煉瓦で建てられました。チャム族の煉瓦は軟らかく、柔軟です。そして、建造物にはセメントや漆喰などの接着剤を使った形跡はないようで、チャンパ人の当時の技術力の高さを物語っています。これは、チャム塔の最大の特徴です。
ホアイ こうした建設技術により、数百年間にわたってそのまま建っている塔もありますが、そのほとんどは戦争や厳しい環境により破壊されつつあります。これを前に、1980年代にポーランドの協力で復元作業が開始されました。
復元中のチャム塔
ソン そして、イタリア、日本、アメリカなどの科学者の手伝いによって、復元作業が進められていますが、チャム塔に使われた元々のレンガに完全に似ているレンガがまだできていないので、復元作業は成功したとは言えません。
ホアイ 去年、ロシアの科学者たちは近代的な技術を使ってチャム塔のレンガを分析しました。分析の結果、そのレンガの構造や物質が大体わかるようになりました。これにより、レンガが風化の影響から守れるようになると期待されています。ロシアのモスクワ・エネルギー大学のグエン・クォック・シー教授は次のように語りました。
(テープ)
「チャム塔のレンガの表面を守るため、ロシアの実験室で幾つかの技術を導入してみました。実験されたレンガをベトナムへ持ってきて、現場でその効果を調査しています。」
ホアイ 調査期間は1年とされていますが、もし、その1年後、実験されたレンガがベトナムの自然の厳しい気候に耐えられるならば、チャム塔の保存・復元作業に大きく寄与すると期待されています。
ソン これからも、チャム塔の保存・復元作業がどんどん進められて欲しいです。チャム族の貴重な文化・芸術の価値を含めるチャム塔なんですね。
では、おしまいに一曲お送りしましょう。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便はベトナムの少数民族チャム族によって建設されたチャム塔についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。