山崎 こんにちは、山崎千佳子です。今週もアンさんとハノイ便りをお送りします。アンさん、よろしくお願いします。
アン お願いします。
山崎 先々週のこの時間は、ハロン湾の保全活動についてお伝えしました。今日もベトナムの遺産を守る取り組みをご紹介します。ベトナム中部、クアンナム省のミーソン遺跡はユネスコ、国連教育科学文化機関の世界遺産として認定されています。ミーソン遺跡は、同じく世界遺産になっているホイアンと一緒によく観光ツアーになっているので、ご存じの方も多いかもしれませんね。
アン そうですね。そのミーソン遺跡は、チャム族の建造物ですが、ミーソンだけでなく、多くのチャンパ遺跡が、ベトナム中南部に残っているんです。中でも、ニントゥアン省はベトナムでチャム族が最も多く住んでいる地方です。チャム族は独自の文化を持ち、言葉をはじめ、着るもの、建築スタイル、彫刻、陶磁器、手織物など、非常に興味深いです。
山崎 ニントゥアン省の行政府は、無形・有形に関わらず、その文化遺産の保存に力を入れています。チャム族の人たちも、これに積極的に参加しています。
アン まず、チャンパ遺跡の代表とも言えますね。ミーソン遺跡群をご紹介しましょう。世界遺産にも登録されているミーソン遺跡はチャンパ王国の聖地でした。チャンパ王国は2世紀から19世紀にかけて、ベトナム中南部の沿海地方で栄えた国家です。ミーソンをはじめ、クアンナム、ビンディンなどで、いくつもの宗教寺院が作られ、遺跡となっています。
山崎 ミーソンで建造物が作られたのは4世紀ごろとされていますが、ここは4世紀から13世紀の間に、ベトナム中部を支配していた古代チャム族の聖地とされていたようです。半径およそ2キロメートルの盆地に、様々なチャム塔が点在しています。
アン 中には、塔がいくつかまとまっているところがありますが、それぞれの真ん中に中心となる塔があって、周りを小さい塔が囲んでいます。主な塔には、男性の生殖器をかたどった円柱形の像を奉ります。全ての塔は太陽の光を受けるために、東に向いています。
山崎 神をまつる祠堂(しどう)、ほこらは、高さ5メートルから数10メートルで、漆喰などの接着剤を使ったあとは見られません。また、屋根は煉瓦を少しずつずらして強度を保つ工夫がされていて、建築当時の技術力の高さを示しているんです。
アン かつては70もの祠堂があったそうですが、戦争中にアメリカ軍の激しい爆撃を受けて、初期の木造建築はほとんど焼けてなくなりました。赤煉瓦造りの祠堂も大きな被害を受けました。
山崎 こういった遺跡はチャム族の宗教にとって欠かせないものです。しかし、今、アンさんが言ったように戦争で壊されたり、時間の経過とともに建造物の劣化が進んでいます。チャム族が住む村の行政府は地元の人々に対して、遺跡群の修復に協力を呼びかけました。ニントゥアン省ニンフオック県に住むダン・ナン・ビン( Dang Nang Binh) さんは次のように話しています。
(テープ)
「1954年、ポクロンチャン遺跡は戦争で破壊されました。しかし、政府の援助と地元住民の努力によって、この遺跡の修復作業が行われたんです。」
山崎 今日のハノイ便りは、チャム族の遺跡の保存に取り組むニントゥアン省の活動について、お伝えしています。ここで一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「Ngay hoi KaTe」をお送りしました。
アン ニントゥアン省の省都、ファンラン・タップチャム市の11の村は、地元住民や国外に在留するベトナム人、企業に対して、戦争で破壊されたポクロンギライ遺跡の修復のための寄付を呼びかけました。
山崎 やはり、地元の人にとっては、非常に重要なものだったんですね。
アン そうです。この遺跡はポクロンギライという王様をはじめ、チャム族の農業の発展に大きく貢献してきた神様の像が安置されていた所なんです。
山崎 また、チャム族の多くの祭りや宗教儀式は、このほこら、祠堂で執り行われているということです。ニントゥアン省ニンフォック県に住む僧侶、ドンバー( Dong Ba) さんの話です。
(テープ)
「私たちはニントゥアン省政府の許可を受けて、自分の資金と企業や団体からの寄付金で、この祠堂を再建しました。いつも、これらの祠堂で宗教儀式を行っています。」
山崎 ニントゥアン省文化スポーツ観光局は、国家遺跡の修復・保存基金を利用して、いくつかのチャム族の遺跡の修復作業を行いました。ニントゥアン省文化スポーツ観光局のファン・クオック・アイン ( Phan Quoc Anh) 局長は次のように話しています。
(テープ)
「私たちは祠堂を囲む石やレンガの囲い、祠堂に入る門や階段などを直しました。ニントゥアン省には戦争で被害を受けた遺跡がまだ残っているので、地元住民は政府に対して、その修復プランを提案しています。修繕にかかる費用を政府と住民で折半することです。」
山崎 ニントゥアン省はチャム族の遺跡にあるほこら、祠堂の修復を行うと共に、中南部のビンディン省やニャチャン市など同じくチャム族の遺跡がある地方と協力して、その遺跡見学ツアーを企画しています。こういったプランによって、これからもチャム族の遺跡がさらにベトナム国内外の観光客に広く知られるようになりますね。
アン そうですね。では、おしまいに一曲お聴き頂きましょう。「~」です。
(曲) 「Nguoi Cham on Bac」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、チャム族の遺跡群の保存に取り組むニントァン省の活動についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。
Chao cac ban。