山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、ベトナム東部海域いわゆる南シナ海にあるチュオンサ諸島の診療所についてお伝えします。
山崎 チュオンサ諸島、英語ではスプラトリー諸島、日本では南沙諸島と言われていますが、これについても、ハノイ便りでいろいろ取り上げていますね。
ソン そうですね。領有権問題で揺れるチュオンサ諸島ですが、現在、ベトナムが実効支配している島の中で、診療所などの医療施設があるのは9つの島になります。
ソン・トゥ・テイ島の診療所
山崎 予想よりも多い数でした。でも、命にかかわることですからね。医療施設は、多ければ多いほどいいですよね。
ソン はい。その中で、一番大きい島はチュオンサ島なんですが、そこの診療所がチュオンサ諸島のメインの医療施設になっています。
山崎 以前、チュオンサ諸島についてお伝えした時に、チュオンサ島には学校や空港もあって、携帯電話の電波も届いていると聞いて、驚いた記憶があります。
ソン そうですね。昔に比べると、大分便利になってきました。面積が15ヘクタールのチュオンサ島は、20年前は何もない状態で、駐屯する兵士の生活は大変だったようです。
山崎 そういうのを考えると、今の生活は夢のようかもしれませんね。チュオンサ島の診療所は、具体的にどんな施設なんでしょう?
ソン チュオンサ諸島の中では1番大きな施設ですが、診察室の他に、病室が3つだけと、小さい診療所です。でも、国の投資とベトナム国民の支援によって、手術室や心電図、超音波装置、レントゲンの機械などがあるんですよ。
山崎 すごい。それだけあれば、いろいろな病気やけがに対応できますね。
ソン はい。それに、本土とテレビ電話を使って連絡できるシステムがあるんです。重症患者でも、本土の専門医師に聞きながら、手術などができるようになりました。
山崎 今は通信技術の発達のおかげで、世界的に遠隔医療が発展していますよね。チュオンサ島の診療所で働く人たちは、どこから派遣されるんですか?
ソン ホーチミン市にある軍の病院からです。医師と看護師が定期的に、大体半年から一年の期間で島に派遣されています。全員が希望者なんですよ。
山崎 すごい。辞令が出たからではなく、自発的になんですね。チュオンサ諸島行政府の幹部(ブイ・ディン・ズオン)の話です。
(テープ)
「チュオンサ諸島の診療所は、国の医療施設の中で、地理的にも心理的にも一番外にあると言えるでしょう。周辺海域で漁をする漁業関係者が事故などにあった際には、救急処置の場となります。派遣されている医師や看護師は経験豊富な選ばれた人たちで、腕も確かです。派遣が何回目かの医師もいます。チュオンサ島の診療所は設備も整っていますし、薬も十分にあります。」
チュオンサ島の診療所で行われた手術
山崎 チュオンサ島の診療所の所長、タイ・ゴック・ビンさんによりますと、患者は思ったより多いということです。チュオンサ諸島の周辺海域がベトナムの伝統的な漁場、漁の場で、多くの漁船が操業していることが関係しているようです。ビンさんの話です。
(テープ)
「昨年、2015年の患者の数はおよそ2600人で、そのうちの600人は急患、急病の患者でした。外傷性脳損傷や急性虫垂炎などの手術も行いました。診療所は、島の人たちや駐屯兵士、漁業関係者から信頼を寄せてもらっていると思います。」
山崎 離島にある3つの病室しかない小さい診療所ということですが、その価値は言葉では言い表せないのではないでしょうか。チュオンサ島の診療所では、ありとあらゆる病気や怪我の処置、治療が行われています。限られた人数の中、それぞれのスタッフは様々な業務をこなして、何でも屋にならなければならないようです。さらに、離島での仕事という特殊な環境のため、どんなことにも対応できるよう、常に医療関係の勉強は欠かせないということです。
ソン チュオンサ島診療所の医師は、島の救難救助センターと連携して、海上で漁師の命を救ったこともあるんです。
山崎 海まで行ったんですね。
ソン はい。今年の1月のことですが、チュオンサ諸島の沖合で漁をしていたチャン・ゴック・クアンさんは急性虫垂炎になりました。命が危ないということで、診療所の医師は大波の中、救難救助センターの船で現場に向かいました。漁船に到着後、応急処置が行われました。
山崎 それで助かったんですか?
ソン その後にチュオンサ島の診療所に搬送されて、2時間の手術が行われました。クアンさんは、漁船での応急処置がなければ、自分は助かっていなかったと話します。
(テープ)
「診療所で治療を受けた後、よくなりました。ここのお医者さんや看護婦さんはとても親切で、毎日よく見てもらいました。しかも、医療費はかからなかったんです。」
患者を診ているチュオンサ島のお医者さん
山崎 チュオンサ諸島の診療所が整備されて、この周辺の救難救助活動が国際的に認められてきたようです。チュオンサ島救難救助センター所長(チャン・ドク・トゥアン)の話です。
(テープ)
「この辺の海域を航行するベトナムの船舶だけでなく、外国の船からも援助要請を受ければ、私たちが救助を行います。 2006年に東南アジア地域の救難救助拠点システムが作られましたが、チュオンサ島の救難救助センターはその拠点の1つになっているんです。」
山崎 ここのところの領有権問題もあって、チュオンサ諸島に対するベトナム人の関心が高まっているそうですね。
ソン はい。支援運動が広がっているんです。診療所も多くの人たちから支えられています。昨年、チュオンサ島など3つの島にある診療所がベトナム国内外の募金によって、改装されたんです。
山崎 募金で、というのが、すごいですね。チュオンサ島の行政府は、離島に住む人たちの健康を守るために、これからも診療所を充実させていく方針だそうです。担当者(グエン・ヴァン・トゥアン)の話です。
(テープ)
「チュオンサ諸島の沖合で漁をする船が多くなっています。天候に左右される漁ですから、それに関連して漁師の怪我や病気が増えています。診療所は、設備面でも人材面でもそれに十分対応できています。漁業関係者の安心できる医療施設となっています。」
山崎 漁をすることで、国の主権を守っている人たちですからね。
ソン はい。その人たちの健康を守るこういった診療所も、ベトナムの領有権問題に大いに貢献していると思います。
山崎 おしまいに、一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、チュオンサ諸島の診療所についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。