山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、「ハノイの秋」が話題です。
山崎 最近は、本当に過ごしやすいですね。日本に比べると寒い時期が短いですけど、ハノイも四季があると言われていますね。
ソン そうなんです。南北に長いベトナムは、場所によって気候が違うんです。ホーチミン市など南部は常夏ですが、北部には四季があります。季節によって、それぞれの美しい風景を楽しむことができるんです。
山崎 ここのところのハノイの気温は、最低気温が20度ちょっと、最高気温が26、7度と、日本で言うと秋の初めの頃といった感じです。
ソン 空は青くて、風も熱くありません。夏に比べて、日差しも柔らかくなってきました。
山崎 そうですね。特に猛暑だった今年は、今の気候がうれしいですね。一番過ごしやすい時期ですね。
ソン はい。そして、ハノイの人たちにとって秋と言えば、「ホアスア」なんです。
ホアスア
山崎 ホアスア。聞いたことがあります。ベトナム語でホアは花、スアはミルクの意味ですね。ミルクの花ですか?
ソン はい。ホアスアの枝を折ると、ミルクの樹液、乳液が出てくるんです。それで、ミルクの花と呼ばれます。
山崎 見たことがあるかもしれませんが、「あの花がホアスア」とははっきりわかりません。どんな花ですか?
ソン 緑がかったクリーム色の花です。小さい花が集まって、毬のような形をしています。その毬のようなものが1つの木にたくさんついています。秋の夜に、ハノイの通りを歩くと、甘くいい香りがするんです。
山崎 ハノイの秋を象徴する花なんですね。
ソン はい。ハノイをテーマとした多くの歌の中にも歌われています。ホアスアの木の学名は、アルストニア・スコラリス(Alstonia scholaris)で、キョウチクトウ科です。樹木の高さは、5メートルほどから高いものは20メートルほどまでになります。
山崎 高いですね。あまり上を見て歩かないので、気がつかなかったかもしれません(笑)。小さい花が集まって毬のような形というのはかわいらしいですね。ソン はい。小さい花の一つ一つは5枚の花びらでできていて、風車のようにねじれているんです。
山崎 それもかわいいですね。花が終わるとどうなるんですか?
ソン 鞘をつけます。それがはじけると、たんぽぽのように綿毛をつけた種が落ちて、路上に綿埃のようにたまります。
山崎 ホアスアの木は、ハノイの至る所にあるんですか?
ソン そうですね。レ・ズアン通りやチャン・フン・ダオ通り、グエン・ズー通りなどハノイの多くの通りにはホアスア並木があります。中でもグエン・ズー通りのホアスアは一番きれいで、いい香りが漂います。でも、いつからホアスアがハノイの町に植えられたかはわかりません。
グエンズ通りのホアスア並木
山崎 グエン・ズー通り沿いにある湖、ティエン・クアン湖周辺がホアスアの香りを一番楽しめる場所だということです。特に花が咲く夕方の時間が、ハノイの人たちにとって、特別な時間のようです。ハノイ市民(レー・トゥン・ズオン)の話です。
(テープ)
「ホアスアと言えば、ハノイの秋とその頃の涼しい空気を思い出します。夜、湖畔を散歩しながら、ホアスアの甘い香りを味わうのは最高です。気候が変わっても、高層ビルが増えても、ハノイの秋とホアスアへの思いは変わりません。その香りには思い出がいっぱいなんです。」
山崎 ハノイの人にとっては、深い思い入れのあるホアスアですが、ホアスアがテーマになっている歌はたくさんあるそうですね。
ソン はい。中でも、1978年に作られた「ホアスア」という歌は一番有名です。「鳥が巣作りする季節のハノイ」という映画の主題歌でした。ホアスアを題材にした初めての歌なんです。
山崎 ではここで、その歌をお送りしましょう。~で「ホアスア」。
(曲)
山崎 「ホアスア」をお送りしました。
ソン 37年前に作られた曲ですが、今でもよく歌われているんですよ。
山崎 そうなんですか。この曲で、ホアスアはよく知られるようになったということですね。この曲の作曲者、ホン・ダンさんはこのように話しています。
(テープ)
「“ホアスア”は、人間と自然との大きな愛を歌っています。ベトナム中部から出てきた私のハノイへ対する思いがベースです。ホアスアの木と花は、ハノイの気高さと美しさを表していると思います。これをハノイの愛の象徴として、この歌を作りました。」
山崎 先ほどお聴き頂いた「ホアスア」が、ホアスアをテーマとした初めての曲ということでしたが、ホアスアが出てくる歌は多いんですか?
ソン 調べてみましたが、歌詞の中に「ホアスア」という言葉がある歌は34曲あるようです。ホン・ダンさん作曲の「ホアスア」を初めとして、ベトナムの国民的音楽家チン・コン・ソンの「ハノイの秋を思う」という歌もとても有名です。ベトナム音楽の代表的なものの一つになっています。
上空から見たホアスア並木
山崎 ハノイ出身のソンさんもホアスアに関する歌が好きですか?
ソン はい。毎年、秋になると、「ハノイの秋を思う」の歌詞をよく口ずさみます。「秋のハノイ、ハノイの秋、風に漂うホアスアの香り」という歌詞です。日本にいた時にも、秋には歌っていました。ホアスアの香りを思い出しましたね。
山崎 ホアスアとその香りは、ハノイの人たちにとって、特別なものなんですね。現在、海外に留学しているというハノイ出身の学生(グエン・ファン・ホアン・アイン)の話です。
(テープ)
「ホアスアの香りは強いので、ホアスアの木が1、2本あるだけで、その周辺はその香りに包まれます。ハノイでは、よく友達と一緒に自転車で通りを回って、ハノイの夜の静けさとホアスアの香りを楽しみました。秋の涼しさとホアスアの香りが自然にミックスされているのは、何とも言えません。どことなく懐かしく、落ち着く感じです。こちらに来てから、ハノイではもうホアスアは3回咲いていると思いますが、今はその懐かしい香りがかげません。ハノイを離れれば離れるほど、その香りと感じ、そして、ハノイのことをよく思い出します。 」
山崎 ホアスアは、ハノイの人たちの心の中にいつでもあるんですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。先ほど少しご紹介しました、ソンさんが秋になると口ずさむ歌です。「ハノイの秋を思う」。
(曲)
「ハノイの秋を思う」をお送りしました。今日のハノイ便りは、ハノイの秋とホアスアについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。