山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。
山崎 今日の話題は記憶遺産ということですが、すみません。私、勉強不足で記憶遺産のことを知りませんでした。
ソン ユネスコが1997年から始めた事業なので、世界遺産や無形文化遺産などよりも知名度は低いかもしれませんね。
山崎 で、記憶遺産というのは何でしょう?
ソン これからも伝えていく価値のある古文書や書物などの歴史的記録物のことです。それを保全して、広く公開するのが目的です。
山崎 なるほど。今日ご紹介するのは、ベトナムの記憶遺産ですか?
ソン そうです。先月19日にベトナム中部のフエ市で、第7回記憶遺産アジア太平洋地域委員会の総会が行われました。そこで、新たにベトナムの2つの記憶遺産が登録されたんです。
山崎 どんなものですか?
ソン フエ王宮建造群の詩文、詩と散文ですね。それと、ハティン省フックザン学校の木版です。
山崎 新たにと言うことは、すでに他にもいくつかあるんですよね?
ソン はい。グエン朝の木版や文廟の石碑なども記憶遺産になっていて、ベトナムでは今回の2つを含めて6つ記憶遺産としてユネスコに登録されています。
山崎 文廟はハノイにある文廟ですね。中国の思想家の孔子を祀るために建てられた廟です。
ソン そうです。その中で今日は、フエ王宮建造群の詩文をご紹介します。
山崎 もうフエは古都フエとして有名で、みなさんご存知かもしれません。
ソン そうですね。19世紀から20世紀にかけて、ベトナム最後の王朝であるグエン朝の首都として栄えました。フエには、中国の清朝とフランスのバロック様式、ベトナムの伝統的なものを取り入れた3つの建築様式が合わさった多くの遺跡が残されています。
山崎 王宮や各皇帝の廟、仏教寺院などですね。フエの王宮群はユネスコの世界遺産に、フエの宮廷雅楽は無形文化遺産にそれぞれ登録されていますね。フエ関連で3つ目ですね。
ソン そうなんです。今回の記憶遺産で、フエはユネスコの三大遺産事業を制覇しました(笑)。
山崎 フエ遺跡保存センターのセンター長(Phan Thanh Hai)の話です。
(テープ)
「フエの歴史的建造物が1993年にユネスコから世界遺産として認定されました。今回また、フエ遺産の中の一つが記憶遺産として登録されたのは、フエの多面的な価値を示すものでしょう。」
山崎 ここで、一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。記憶遺産に登録されたフエ王宮建造群の詩文は、どんなものなんでしょう?
ソン 1802年から1945年まであったベトナムのグエン朝の歴代の皇帝が執筆した詩文が、王宮の建物に刻まれているんです。レリーフ、浮き彫り細工されたりもしています。
山崎 やはり、他にはない特徴があるんでしょうね。
ソン はい。記憶遺産アジア太平洋地域委員会副委員長(Vu Thi Minh Huong)の話です。
(テープ)
「提出された記憶遺産の申請書類には、フエの建造物に刻まれた詩文の特徴はここでしか見られないということが明記されていました。アジア太平洋地域内の各国にも見られないものです。日本や韓国などベトナムに近い国でも、このようなものはありません。独自性があります。」
ソン フエ王宮の中で最も多く詩文が刻まれているとされているのが、グエン朝第3代皇帝ティエウ・チーが1845年に建設したロンアン宮殿です。ティエウ・チーは文才があったことで有名です。
山崎 王様自身が作った詩や文が刻まれているんですね。
ソン そうです。漢字で書かれたものなんですよ。
山崎 ええ、漢字なんですか?貴重なものですね。
ソン はい。グエン朝の詩文の博物館と言えるかもしれませんね。その他、王宮の中央にある太和殿にも、300もの詩が刻まれています。
山崎 太和殿?
ソン 太和殿はグエン朝の歴代皇帝の即位式が行なわれた建物です。太和殿に見られる詩は、国の領有権をうたったり、平和への願いを表現したものが多くなっています。
山崎 どこの国でもそうかもしれませんが、昔から、領有権問題があったんですね。
ソン そうですね。現在、フエ王宮建造群には、木材に刻まれた詩文がおよそ3000、エナメル画に刻まれたものが146点、陶器に刻まれたものが78点あります。これらは当時の職人によって彫刻されましたが、詩や文とともにそれぞれに一つの絵が書き添えられているんです。
山崎 おしゃれな感じですね。職人の気持ちがこもっていますね。そういうのは、よくあるんですか?
ソン いえ、フエ以外では見られない独特なものなんです。
山崎 おもしろいですね。先ほども話を聞いたフエ遺跡保存センターセンター長(ファン・タイン・ハイ)の話です。
(テープ)
「他の国では建造物の装飾には、横額という横に長いフレームを使ったり、対句、これは2枚の板に書かれてあるので、ほかの場所に持ち運びができます。詩や文を装飾として使うのも少ないと思います。フエでは、建物を詩文で飾る割合が多く、室内室外問わずどこにでもあります。グエン朝の皇帝が詩文で国を支配したような感じがします。」
山崎 現在でも、建物に刻まれた詩文が昔のまま、保存されています。その詩や文の内容も信ぴょう性のある史書、歴史を記した書物、歴史書と言われているようです。
ソン 詩文がその内容でも高い評価を持つ他に、美術作品としても価値あるものとなっています。
山崎 では、おしまいに一曲お送りしましょう。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、ユネスコの記憶遺産に登録されたフエ王宮建造群の詩文をご紹介しました。それでは、今日はこのへんで。