山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。山崎さん、ストリートアートという言葉を耳にしたことはありますか?
山崎 あります。街中の壁などに描かれた絵のことですよね。
ソン そうです。直訳すると、通りの芸術という意味になるストリートアートは、壁や道路をキャンバスにして、ペンキやスプレーで絵を描くことです。グラフィティーとも呼ばれています。
ハノイの壁に描かれたグラフィティー
山崎 初めは、単なる落書きから始まったと思いますが、中にはレベルの高い芸術作品と言えるようなものもありますよね。
ソン そうですね。その場所の所有者に無断でやってしまうと犯罪行為ですが、今はリーガルグラフィティーという合法的な落書きができるところもあるようです。
山崎 それはいいですね。合法的かどうかは別にして、世界の大きな都市では、大体ストリートアートが見られますね。芸術の一つの形となっていますね。
ソン そうですね。でも最近では、ストリートアートが、絵だけでなくて、路上での音楽ライブや劇のパフォーマンスまでを指すようになったんです。ベトナムの若者の間で人気があって、その動きが広がっているんです。
山崎 ベトナムの人はどちらかというとシャイなイメージなので、意外に感じますね。
ソン そうですか?今日のハノイ便りは、ベトナムのストリートアートについてお伝えします。
山崎 ベトナムでストリートアートが始まったのは、いつぐらいでしょう?
ソン はっきりと、「このころ」とは言えないんですが、私の記憶では、街の壁などに描かれた絵、グラフィティーを初めて見たのは20年ぐらい前ですね。
山崎 やはり初めは、誰かの落書きだったんですよね?
ソン はい。若者のいたずらだと批判されていました。でも、およそ10年前、2006年ごろになると、グラフィティーがメディアでも頻繁に取り上げられるようになりました。
山崎 マスコミが注目するということは、一般の人たちも関心を持ち始めたんですね。
ソン そうです。それと同時に、ストリートアートという言葉は、壁に描かれたグラフィティーをはじめ、歌や踊り、劇など、路上で行われる全てのアートを意味する言葉として使われ始めました。
山崎 そして、一種の芸術活動として認識されるようになったんですね。
ソン はい。アーティストたちはイベントを行ったり、雑誌に掲載されたりと活躍の場を広げました。
山崎 どんなイベントが行われたんですか?
ストリート・アート・フェア
ソン 昨年、2015年にハノイで初めて行われた「ストリートアートフェア」は、一番大規模なもので、まさにストリートアート好きの祭りでした。
山崎 盛り上がったんですね。
ソン はい。そして今月の初めには、第2回のストリートアートフェアが行われました。ハノイクリエーティブシティーで行われました。
山崎 ハノイクリエーティブシティー。初めて聞きました。
ソン 昨年9月にオープンした娯楽商業施設です。ここではストリートアートの場を提供しています。建物の壁やテントなど、いたるところに絵が描かれてあったり、絵が展示されてあったりと、身近にストリートアートを体験できます。
山崎 合法的な落書き、ですね。第2回のストリートアートフェアでは、どんなことが行われたんでしょう?
ソン 壁画などグラフィティーや音楽のほか、アクションペインティングやフェイスペインティングなど、新しいアートが紹介されました。
フェイスペインティング
山崎 フェイスペインティングは、顔に絵を描くことですよね。よく日本代表のサッカーの試合などで、観客が顔に日本の国旗の日の丸をワンポイントで描いていますね。アクションペインティングは、何でしょう?
ソン 描くという行為自体を重視する抽象絵画の手法の一つです。絵の具やペイントなどを垂らしたり、飛び散らせたりするものです。
山崎 前にテレビで見たことがあります。何も考えずにやっているようで、きれいな模様や絵ができていたりするんですよね。
ソン そうですね。見ているだけでも楽しいですが、ストリートアートフェアでは、アーティストによるパフォーマンスのほかに、アクションペインティング教室も行われました。
山崎 おもしろそうですね。ちょっと教えてもらうと、誰でもアーティストになれるんじゃないですか?
ソン そうなんです。誰でも持っている物を創る力、参加者の創造力を刺激したようです。
山崎 アクションペインティング教室に参加したハノイ技術大学の学生(クック・クォック・フンさん)の話です。
(テープ)
「こういうイベントに参加したのは初めてです。アーティストたちの創造性に驚きました。自分も何か創って、いろいろな人に見てもらいたいという気持ちになりました。」
山崎 ストリートアートフェアでは、アーティストだけでなく、一般の人も自分の得意なストリートアートの分野でパフォーマンスを行ったそうです。このイベントの発起人の画家(フォン・ブー・マインさん)の話です。
(テープ)
「数年前にヨーロッパを訪れて、そこで初めてストリートアートに出会いました。とても面白いと思いました。自分の街ハノイにもヨーロッパと同じように、ストリートアートが根付くのではないかと考えました。これはいい文化です。ハノイの人たちにストリートアートを知ってもらって、仕事の後などに芸術を楽しむ習慣ができたらいいと思います。これからもこのようなイベントを行っていくつもりです。」
山崎 今回のフェアでは、何かおもしろいパフォーマンスがあったようですね。
ソン はい。学生たちが行った手袋パフォーマンスは、一般の人たちはもちろんアーティストたちもびっくりしていました。
山崎 手袋で何をしたんですか?
手袋パフォーマンス
ソン 指の先と手のひら部分にLED、発光
ダイオードがついていて、手の動きによって光も動いて、素晴らしいパフォーマンスだったと評判でした。
山崎 発想がいいですね。発起人のかたも言っていましたが、こういうイベントを通じて、誰でもできる楽しめるストリートアートというのを伝えたいんですね。
ソン そうですね。ハノイクリエーティブシティーの広報担当者(グエン・ティ・フォン・ニーさん)の話です。
(テープ)
「ハノイクリエーティブシティーでは、文化や芸術をテーマとした活動をいろいろ行ってきました。これからも、コミュニティー向けのイベント、一般のかたたちに芸術を知ってもらうためのイベントを多くやっていこうと思っています。」
ソン 現在、ベトナム各地には、ハノイクリエーティブシティーのような芸術活動に空間を提供する施設がおよそ40カ所あるそうです。
山崎 多いですね。これから、ストリートアートやその他の芸術関連の話題が多くなっていくかもしれませんね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、ベトナムのストリートアートについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。