ベトナムの沿海地帯の信仰文化

ハノイ便りの時間がやってまいりました。

ホアイ ご機嫌いかがですか皆さん。ホアイです。

フン こんにちは。フンです。さて、今日のハノイ便りはベトナムの沿海地帯の信仰文化についてご紹介しましょう。

ホアイ そうですね。東は太平洋に面して、海岸線およそ3200キロに及ぶベトナムの多くの住民の生活は海に頼って、生活をしています。漁民の生活は常に危険にさらされているため、彼らの間には危険から守ってくれる神様への信念が生まれました。鯨を祀る信仰もその一つですね。

フン そうですね。その昔、漁民たちは小型船に乗ってしけの海に漁に出て遭難しました。鯨は海に浮かぶ遭難者を岸まで運びました。そのため、ベトナム中部では、浜に漂着するクジラを 「魚の王」としてその頭蓋(ずがい)(ほこら)に祀る信仰がありましたね。

ホアイ そうですね。中部にある多くの漁村は浜に漂着(ひょうちゃく)した鯨の死骸(しがい)を肉親を思うように丁寧に(ほうむ)りました。鯨は神様として祀られています。鯨は漁民たちの心の拠りどころとなっていますね。

フン そうですね。毎年、これらの漁村は浜に漂着した鯨の死骸を安置するため、鯨廟(くじらびょう)を建設して、毎日、供養しました。後に、その供養は鯨の恩をしのぶ祭りとなってゆきました。

ベトナムの沿海地帯の信仰文化 - ảnh 1

ホアイ 実際、鯨を祀る信仰はベトナム人の海洋文化の一つとされています。中国やカンボジアにはこの信仰が見られませんね。これについて、ベトナムの文化研究者のチャン・ゴク・テム( Tran Ngoc Them) 博士は次のように語っています。

(テープ)

「ベトナムの漁民は鯨を祀る信仰があります。特に、中部と南部の漁民です。北部ではあまり盛んではありませんが、ないとは言えませんね。例えば北部クアン・ニン省でも、鯨を祀る信仰がありますが、鯨の死骸が安置される建物は中部のものと比べると小さいです。この信仰は海に頼って生計を立てる地域に存在しています」

ホアイ チャン・ゴク・テム博士の話でした。では、このへんで、ティータイムにしましょうか。

フン では。「漁村の集会所」 (Mai dinh lang bien)をお聴きください。話を続けましょう。沿海地帯にある漁村には鯨を祀る信仰のほか、鯨の恩をしのぶための祭り「ギンオン」祭りというのも行われていますね。

ベトナムの沿海地帯の信仰文化 - ảnh 2

ホアイ そうですね。この祭りの儀式は地方によって異なりますが、大部分は秋の終わり、または、春の始まりに執り行われるようです。この儀式は2,3日にわたり、本土と海上で行われますね。

フン 本土の儀式はこの祭りの最も重要で、鯨の骨が安置されている廟で厳粛に行われます。3日間の祭りには多くの芸術的なパフォーマンスや民族的なゲームが行われます。ベトナム人の文化研究者フィン・コク・タン( Huynh Quoc Thang) 博士は「この儀式は鯨への感謝の気持ちと大漁を祈る意味がある」と明らかにし、次のように語りました。

(テープ)

「この祭りを通じて、漁民たちは鯨を始め、海に対する感謝の気持ちを表します。そのほか、漁民たちは漁の無事と大漁を祈ります。」

フン フィン・コク・タン(Huynh Quoc Thang) 博士の話でした。沿海地帯の漁村での鯨を祀る信仰のほか、いくつかの漁村では「片足の神様」を祀る信仰もありますね。

ベトナムの沿海地帯の信仰文化 - ảnh 3

ホアイ そうですね。タインホア省サムソン町には現在、「片足の神様」を祀る神社があります。この神社は15世紀に建立されました。タインホア省の「Than Doc Cuoc」、いわゆる、「片足の神様」を祀る神社の宮司であるファン・テー・タオ( Phan The Thao)さんは次のように語りました。

(テープ)

「片足の神様」は身体を二分にし、南シナ海で漁をしている漁民を守るため、半分は海にあり、もう半分は本土の漁民の平穏な生活を守るため本土にあります。「片足の神様」を祀る神社は漁民が漁の無事と豊漁を祈るため参拝に行く所だけでなく、観光スポットの一つでもあります」

ホアイ タインホア省の「片足の神様」を祀る神社の宮司であるファン・テー・タオさんの話でした。ベトナムの沿海地帯の各村では鯨や海の神様を祀る神社がたくさん見られます。漁民は漁に出る前に、参拝に行き、幸運を祈ります。また、本土で夫や子供を待つ妻や母親はそこに行って、沖合いで漁をしている夫や子供の無事を祈りますね。

フン そうですね。今も、沿海地帯の各村でこれらの信仰が維持され、ベトナムの伝統的文化の一つとなっていますね。

ホアイ では。おしまいに、夕暮れの海の歌(Bien hat chieu nay)をお聴きいただきながら、今日のハノイ便りを終わりにしましょう。

ホアイ リスナーのみなさん。今日のこの時間はベトナム沿海地帯の信仰文化についてご紹介しました。それでは、今日のハノイ便りの時間はこれで終わります。来週のこの時間にまた、お会いしましょう。ごきげんよう。

Chao cac ban

 

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