ハノイ便りの時間がやってまいりました
ホアイ ご機嫌いかがですか皆さん。ホアイです。
アン こんにちは、アンです。今日のこの時間は中部高原地帯ティグエン地方の口承叙事詩とその保存活動についてご紹介しましょうか?ホアイさん
ホアイ いいですね。中部高原地帯ティグエン地方は、エデ族、バナ族、ジャライ族など、様々な少数民族が住んでいます。この地方はドラとシンバルの演奏や水牛のいけにえ祭り、暗誦して伝えられた口承叙事詩の発祥地として知られていますね。
アン 史実を伝える叙事詩は、歴史的には、古代エジプの大作「イリアス」やインドの「マハーバーラタ」がよく知られていますが、ベトナムでは70年前にフランス人の学者がティグエン地方のエデ族の人々は叙事詩「ダムサン」(Dam San) を保存していることを見つけましたね。
ホアイ そうですね。この地方では、バナ族、ジャライ族の叙事詩が相次いで発見されています。それらは、ティグエン地方の少数民族の風習や英雄の姿が描かれています。
アン ティグエン地方では、村の祭りや行事が行われる際に、語り部がその叙事詩を読みあげます。夜になると、人々は火の回りに集まり、自分たちの村の歴史や日常生活の物語に引き込まれてゆきます。
ホアイ 語り部は座ったり横になったりしながらも、昔から口伝えされてきた叙事詩を語り続けます。静かな闇の空間で、炎(ほのお)の前で、その声はタイグエン地方の森の中に響き渡ります。
アン その冒頭で、語り部は次のように詠みます。「息子たちよ、娘たちよ、遠方からここに来て、炎に寄り添ってくれ、老婆は男女の恋物語を語ろう」と
ホアイ 叙事詩は、いくつもの時代を超えて、口伝えに受け継がれてきました。一つの物語が4~5日間、毎晩、語られます。語り部は、その内容によっては、語り、あるいは、歌います。演出家でもある彼らは、役者や歌い手であり、プロデューサーにもなるんですね。
アン そうなんですね。では、このへんで、ティータイムにして、歌をお楽しみいただきましょう。Bai hat
話を続けましょう。タイグエン地方では、数百にものぼる叙事詩が発見されていますが、語り部の数は年々減っています。文化研究者はティグェン地方の叙事詩が滅亡する恐れに追い込まれていることを懸念しています。
ホアイ そうですね。その理由として挙げられるのは現在生活の中で少数民族の人々は叙事詩に対する興味が薄くなってきたとともに、叙事詩を読む空間として使われている合掌造りの家も少ないということですね。
アン そうなんです。しかし、中部ダクラク省の民間文化研究者リンガニエクダムさんはティグェン地方の叙事詩が消えてしまうかもしれない最も重要な原因について、次のように語りました。
(テープ)
「ティグェン地方の叙事詩の豊富さは世界一だと思いますが、語り部の数が減っているので滅亡の危機にさらされています。現在、ぞの叙事詩はもはやティグェン地方の人々の生活ではなく、ペーパーの上に残るだけです。語り部は数人しか残っていない上、多くは老齢化しています。この叙事詩は口承により受け継がれてきましたが、語り部が亡くなったら、もう保存できないでしょう」
アン ベトナム文学芸術研究所のホアンソン副所長によりますと、ティグェン地方の叙事詩を保存するため、当面実施すべきことはこれらの叙事詩の語り部の声を録音して、テープやディスクに移し、ティグェン地方にある各村のラジオ放送で放送するということです。
ホアイ それと同時に、ティグェン地方の叙事詩を少数民族の言語だけでなく、多数民族の言語に翻訳して、少数民族の人々の学校のカリキュラムに取り入れるということです。ソン副所長の話です。
(テープ)
「私たちは健在している語り部が若者などを後輩に、叙事詩を教える空間を作らなければなりません。例えば、80歳の語り部は60歳の人々に教えることができます。しかし、これを実現させるためには彼ら自身ではできません。各地方の行政がこの事業を支援する必要があります」
ホアイ ソン副所長の話でした。現在、コントゥム省を始め、ティグェン地方のいくつかの省では叙事詩を教える教室が作られましたが、とても追いつきません。コントゥム省の文化スポーツ観光局の文化サービス室のファンバンホア室長は次のように語りました。
(テープ)
「私たちは叙事詩の出版と叙事詩を教える教室を開きました。叙事詩の保存はこれは一朝一夕に出来るものではなく、とても長い時間がかかる作業だと思います。その他、語り部を支援する政策をとる必要があります」
ホアイ ホア室長の話でした。現在、バナ族、セダン族、ムノン族、エデ族、チャム族、ザライ族など6の少数民族の叙事詩合わせて6万ページに及ぶ75点が出版されています。
アン また、文化スポーツ観光省は関連各機関に対して、ティグェン地方の叙事詩を国家の無形文化遺産のリストに入れるため申請書類を作成するよう求めました。
ホアイ 近い将来、ティグェン地方の叙事詩がユネスコにより無形文化遺産に登録されることが期待されていますね。
では、ここで歌をお聴き頂き、今日のハノイ便りを終わりにしましょう。
アン。。。。。。。。をお送りしました。リスナーのみなさん。今日のこの時間は中部高原地帯ティグエン地方の口承叙事詩とその保存活動についてご紹介しました。それでは、今日のハノイ便りの時間はここで終わります。来週のこの時間に又お会いしましょう。ごきげんよう。 Chao cac ban。