伝統音楽と現代音楽の組み合わせに創意工夫を凝らす歌手
(VOVWORLD) - 伝統民謡「ハットサム」を若者に普及したいという夢を持っているハー・ミョーは、若者の間で人気のあるラップやEDMなどの現代音楽を利用して「ハットサム」を若者にとって身近なものにすることにしました。
歌手「ハー・ミョー」 |
近年、伝統音楽と現代音楽の組み合わせを目指す取り組みが見られており、その中で、伝統民謡「ハットサム」と、ラップおよびEDMエレクトロニック・ダンス・ミュージックとの組み合わせに創意工夫を凝らして一定の成功を収めている歌手「ハー・ミョー」がいます。ベトナム音楽界の「ミステリアスな風」とされている彼女はベトナムの伝統音楽を国内外のより多くの人々に知ってもらうために、その組み合わせに力を入れています。
(テープ)歌「ハノイのサム」
お聴きいただいているのは、ハー・ミョ―が歌う「ハノイのハットサム」です。この歌は、伝統民謡「ハットサム」に新風を送り込んだと好評を得ています。2020年のハノイのど自慢大会で「ハノイのハットサム」を歌ったハー・ミョーは二等賞のほか、「ハノイをテーマとした最高の歌」という賞も受賞しました。
歌手「ハー・ミョー」の本名はグエン・ティ・ゴック・ハーで、1993年生まれです。ベトナム歌舞団に勤務中のハー・ミョ-は勤務先で開かれた伝統音楽に関する勉強会で初めて「ハットサム」に触れました。「ハットサム」というのはベトナム北部独特の節回しの民謡で、封建時代に貧しい歌い手が都会の市場や辻でこれを歌い、門付け(かどづけ)芸人として暮らしていました。元々は、目の不自由な人がこの民謡を街中で歌い、生計を立てるため、市場や街頭などの路上でパフォーマンスをして金銭を恵んでもらい暮らしていました。人生の不運や悲しみ、苦しみを歌ったり、また英雄を讃えたりする内容の歌などがあります。悪を非難する歌詞もあります。
ハー・ミョーはこの伝統民謡を研究すればするほど、好きになり、その美しさへの理解を深めました。消滅の危機に追い込まれた時もあった「ハットサム」は近年、幾つかの地方で復興されていますが、若者の関心がまだ薄いのは現状です。そのため、「ハットサム」を若者に普及したいという夢を持っているハー・ミョーは、若者の間で人気のあるラップやEDMなどの現代音楽を利用して「ハットサム」を若者にとって身近なものにすることにしました。
2022年度「ベトナムの若者を代表する顔」という賞を受けたハー・ミョー |
「ハノイのハットサム」が若者に受け入れられていることを受け、ハー・ミョーは、「ベトナムの春のハットサム」というプロジェクトを立案し、春をモチーフにした曲を作ることに注力しています。これまで、「青春のハットサム」と「春を祝うハットサム」という2曲が作られ、好評を得ているそうです。
(テープ)歌
お聴きいただいているのは「春を祝うハットサム」です。この曲は、伝統民謡「ハットサム」の固有な特徴を維持しながら、若者が受け入れやすくするため、現代音楽の要素を巧みに取り入れられていると評価されています。ハー・ミョーは、「ハットサム」に新風を送り込んだと言っても「ハットサム」の核の部分をそのまま保つようにしていると述べ、次のように語りました。
(テープ)
「私にとって、音楽作品は面白さと美しさのほか、社会に与える価値を持っていなければならないと思っています。私のミュージックビデオは伝統民謡のほか、ベトナムの自然の風景や風俗習慣、民間の遊び、料理なども紹介しています。その意味で、私のミュージックビデオは人々を楽しませる娯楽であるだけでなく、ベトナムを理解して、国への愛情をより深めるためのものです。これは、私の音楽作品の終始一貫した目標です」
ハー・ミョーはこれから、「ハットサム」のほか、他の伝統音楽を若者の間に普及させるため、全国各地を回って伝統音楽の研究を重ねようとしています。ハー・ミョーの話です。
(テープ)
「私にとっていろいろな国に行って多くの文化に接触すればするほど、ベトナムの個性はベトナムの文化と人々によるものだということがわかりました。私は「ハットサム」に興味を持って、この民謡を若者に普及させたいという夢をもっています。ベトナムの伝統音楽は肥沃な土地のようで、正しく開発できれば、その土からよい種が芽生えるでしょう。これからは、「ハットサム」のほか、多くの伝統音楽を若者に伝えたいです。カーチューやチヤウヴァンなどの伝統音楽は現代音楽と組み合わせ、ベトナムはもちろん、世界各国のステージで披露できるものと期待しています」
伝統音楽と現代音楽の組み合わせにおいてハー・ミョーとともに歩んでいる音楽研究者グエン・クアン・ロンさんは、伝統音楽と現代音楽の組み合わせは音楽界にとって難しい課題で、若い歌手であるハー・ミョーの取り組みは表彰されるべきであると述べ、次のように語りました。
(テープ)
「ハー・ミョーは、伝統音楽と現代音楽を組み合わせて、よい作品を作ることで社会に貢献するという夢を持っています。ベトナム音楽はハー・ミョーのような情熱あふれるアーチストがたくさんいれば、新しい発展方向を見つけ、ベトナムならではの音楽になるでしょう」
現在、ハー・ミョーは、「学校に伝統音楽を伝えよう」というプロジェクトの展開に力をそそいでいます。プロジェクトを通じて、伝統音楽は生徒と学生にとって身近な存在となり、永遠に保たれることを期待しています。その伝統音楽の保存と開発への取り組みに対し、ハー・ミョーはホーチミン共産青年同盟から、2022年度「ベトナムの若者を代表する顔」という賞を授与されました。この賞とまわりの人々の応援は彼女の大きな励ましとなっています。