ベトナムの身近な話題をお伝えするハノイ便りの時間です。

山崎  こんにちは、山崎千佳子です。アンさんと一緒にハノイ便りをお伝えします。今年最後のハノイ便りですね。

アン そうですね。今年もあと３日となりました。

山崎 先月、ベトナムの民間信仰、聖母道についてお伝えしました。今日はこの聖母道で最も重要な儀式のレンドン、これはハウドンとも言うそうですが、その儀式についてお伝えします。

アン レンドンはベトナム語で、神が霊媒に乗り移って預言や踊りなどを行うことです。バードンと呼ばれる霊媒師を通じて、神と向き合う儀式です。レンドンは、宗教現象と民間芸術の要素が結び付いています。霊媒師のバードンに、天の神、地の神、水の神、山の神がとりついて、人々はその神たちに祈りをささげます。

山崎 霊媒師は神によって、その都度、衣装を変えるそうです。赤い衣装は天の神、黄色い衣装は地の神、白い衣装は水の神、緑が山の神です。天の神の使いは馬ということで、紙で作った馬に願いを書いたものを付けます。それを、自分の身代わりの人形と護衛としての小さな龍と共に、燃やします。それが、煙となって天に願いを届けるということです。

アン 地の神は黄色い象で、紙の象に願いを書いたものをつけて、それを燃やします。同じく、煙となった願い事が地の神に届けられます。水の神への願い事は白い船を紙で作り、同じようにします。山の神へは紙で作ったいかだに、同じく紙で作った12人の楽隊と二人の侍女を乗せます。

山崎 願いをかける人のその内容によって、霊媒師の変身も多くなり、衣装は多い時には24回替わるそうです。レンドンの踊りは、霊媒師の踊りです。普通の状態とは違う、まさに神がかった状態になって、とりついている神を表現します。そして、その神にまつわる様々な踊りを舞うということです。

アン 例えば、その神が将軍であれば、剣を手に持って、戦うような動きをします。山林にいる神なら、民族衣装を着て、その少数民族独特の踊りを踊るなどします。霊媒師は衣装を変えて、それぞれの神を表現します。同時に、集まった周りの人たちに、紙幣や果物、花などのお供え物を、神からの贈り物として与えます。

山崎 霊媒師は、周りの信者に神からの贈り物を分け与え、言葉ではなく身振り手振りで指示を出すということです。ベトナム民間信仰文化研究保存センターのゴー・ドゥック・ティン( Ngo Duc Thinh) 所長の話です。

（テープ）

「人々は願いを霊媒師を通じて、神に伝えます。一回のハウドンの儀式で、霊媒師はおよそ20回にわたって、変身します。」

山崎 今日のハノイ便りは、ベトナムの民間信仰、聖母道の儀式、レンドンについて、お伝えしています。ここで、一曲お送りしましょう。「～」です。

（曲）

「～」をお送りしました。

アン レンドンのような儀式はベトナムだけでなく、世界中で行われています。が、やはりベトナムでの儀式はベトナム文化の特徴を表しています。

山崎 レンドンで出現するのは、聖母道で祀られている神様です。ベトナムでの聖母道では、実在の人物、英雄などを神になぞらえています。例えば、ホアン・ムオイという神は、13世紀のレ王朝時代に活躍したグエン・シーという将軍です。ベトナム民間信仰文化研究保存センターのグエン・ティエン・ズン( Nguyen Tien Dung) さんの話です。

（テープ）

「聖母道では36の神様が祀られ、神々は天、地、森林、山などを管理しています。それぞれの神は、ランクが分かれています。」

山崎 聖母道のハウドンの儀式を通じて、人々はよりよい生活を祈願します。ベトナム民間信仰文化研究保存センターのゴー・ドゥック・ティン( Ngo Duc Thinh) 所長は次のように話しています。

（テープ）

「世界中にあるこのようなシャーマニズムの儀式の中で、このような形で行っているのはベトナムだけです。乗り移る対象によって衣装を変えたり、踊りを踊るというのは、ベトナム伝統文化の特徴を示しています。アメリカ人のある学者は“ハウドンの儀式は民族の伝統を保存する博物館のようだ。そこには物が展示されているのではなく、生身の人間がある”と言っていました。」

山崎 聖母道のハウドンの儀式は、人々に癒しと力を与えているようです。昔から伝わってきたこういった風習は、宗教というくくりでなく、伝統文化の一つとして、これからも伝えられて行くんでしょうね。

アン そうですね。では、おしまいに一曲お聴き頂きましょう。「～」です。

（曲） 「～」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、ベトナムの民間信仰、聖母道の儀式、レンドンについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。 

Chao cac ban。