(VOVWORLD) -ハロン湾のあるベトナム北部クアンニン省に、トゥオンドンという小さな村があります。
ハインさん |
この村の住民で、元軍人のファム・ドゥック・ハインさんを知らない人はいません。ハインさんはおよそ15年間、主に子供達の下校時間に、通学路の中でも交通量が多い国道18号線で見守り運動を続けています。子供や歩行者の安全を守るためです。今年70歳になるハインさんは、晴れの日でも雨の日でも、ほぼ毎日、50センチほどの竹の棒とホイッスルを携えて、子供達と一緒に道路を渡ります。ハインさんの話です。
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「子供や歩行者がこの道路を無事に横断できるよう、その手伝いをしています。ここはバイクや車の交通量が多い上、下校の時間帯になると、数千人の子供がこの道を渡ります。交通整理をしながら、子供達を見守るようにしています。病気の時など体調が悪い時だけは休みますが、学校が終わる時間になると、家の仕事があっても、毎日ここへ来るように頑張っています。そうしないと、とても不安になってしまうんです。」
昔、軍人として戦地に赴いていたハインさんは、軍をやめてから、この国道18号線で交通事故を目撃しました。それが元になって、子供や地元の人達の安全のために少しでも役に立ちたいと思ったそうです。ハインさんの話です。
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「多くの人から、どうしてボランティアでこれをやっているのかと聞かれます。でも、これは、元軍人としての自分の義務のように思うんです。本物の友情はお金よりも価値があると言うでしょう。子供達から 『おじいさん、こんにちは』と声をかけてもらうだけでも、うれしいです。軍の部隊にいた者として、人の命を守るこの手伝いを、死ぬまで続けたいと思っています。」
多くの人がハインさんに敬意を表しています。道路沿いで喫茶店を営む女性の話です。
(テープ)
「ハインさんには敬服します。赤の他人の子供達の安全を守っているんです。尊敬するのは当たり前です。十何年もお金をもらわず、熱心にこの仕事をしていて、本当にすごいです。」
ここを通って学校に通う小学1年生の母親の話です。
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「この道路は広くて、バイクや自動車もスピードを出していて、とても危険です。私もこわいです。子供達を見守ってくれるハインさんがいて、とても安心しています。」
同じく、通学にこの道を使う小学3年生の話です。
(テープ)
「学校から家に帰る時、おじいさんのお陰で、道を無事に渡れるようになりました。おじいさんに、いつもありがとうと言いたいです。」
子供や歩行者などを事故から守るハインさんの行動は、お金には代えられないものとなっています。