ベトナム北部(紅河)ホン川デルタにある寺院について言うなら、ケオ寺を抜きにして語ることはできません。この寺はベトナムの古代建築様式をもつ代表的な建築物です。
ハノイから南東へ約90㎞の、タイビン省の省都タイビン市からさらに15キロ離れたところにあります。言い伝えによりますと、この寺は李朝時代の高僧・空路禅師によって1061年に建立されました。当初は厳光寺と言いましたが、1167年、神光寺と改名されました。
ケオ寺は広い敷地があり、三関門が二つ設けられ、外側と内側の門の間には池が配されています。内側の三関門には、後黎朝時代の17世紀に作られた高さ2m、幅2.6mの木製の扉があり、母と子の龍が刻まれています。ケオ寺遺跡管理委員会のレ・フォン・ズン ( Le Phuong Dung) 委員長は次のように語りました。
(テープ)
「レ朝後期に龍を刻む時、母龍の他、子供の龍がいつもそばにいることから、龍の群と言います。母の龍は「下降する龍」という強い姿勢にあります」
内側の三関門をくぐると、前庭をはさんで「工」字形の本堂があります。本堂の前には、1632年の石碑があります。本堂には、涅槃仏や准胝(じゅんてい)観音、文殊菩薩、普賢菩薩などおよそ100の仏像が祀られています。本堂の背後に、空路禅師を祀る祖師堂があります。
ケオ寺で最も印象的なのは境内の最も奥まったところにある鐘楼です。この鐘楼は高さ11mで、3層の屋根を持ち、2階に1686年鋳造、3階とその上に1796年鋳造の梵鐘がそれぞれ吊り下げられています。ケオ寺の参拝客 グェン・バン・ナム( Nguyen Van Nam) さんはこの鐘楼を建設した職人の腕の良さに感服し、次のように語りました。
(テープ)
「この鐘楼はこんなに高いのに、ランニングブロックやクレーンなどがなかった昔の人々は多分、土を高く積み上げて、梵鐘つるしました。これにより、鐘楼のそばに池があるのです」
建立されてから400年が経ちましたが、ケオ寺は昔のままの建築様式を持っています。毎年行われケオ寺祭りは数多くの参拝客を集めています。地元の住民の一人であるファム・テイ・ガ ( Pham Thi Nga) さんは次のように語りました。
(テープ)
「ケオ寺は1年に2回、旧暦1月と9月に祭りが行われますが、1月に行われる祭りに参加する人々が多くいます。祭りには儀式の他、民謡の歌垣、ご飯を炊くコンテストなどが行われます」
ケオ寺を訪れれば、仏教の建築様式を見学できるだけでなく、タイビン省の独特な文化を理解し、地元の素朴な人々と出会うことができるでしょう。