ベトナムの54の民族のうち、わずか数百人しかない少数民族があります。その中で、中部ゲアン省トゥオンズオン県に住むオドゥ（O Du）族は、人口が最も少ない5つの少数民族の一つです。

オドゥ族の女性たち

2019年の国勢調査によりますと、オドゥ族の人口はわずか441人です。オドゥ族の長老によりますと、この民族は元々ラオスの中部に居住しており、その頃の人口はかなりいましたが、14世紀の終わりごろ、戦争が起きて全滅の危機に陥ってしまいました。全滅を避けるためには、ばらばらになって、他の地域へ移住するとともに、自分たちの言語や風俗習慣などを使わずに、他の民族の陰に潜んできました。

現在、オドゥ族はベトナム中部ゲアン省トゥオンズオン県に集中的に住んでいますが、タイ族とコム族と一緒に住んでいるため、それらの民族から大きな影響を受けています。その中で最も大きな影響は、オドゥ族の人々のほとんどがオドゥ族の言葉より、タイ族とコム族の言葉の方を日常生活で使っているということです。実際、オドゥ族の言語でよく喋れる人はほんのわずかで、そのほとんどが80歳以上です。そのため、オドゥ族の言語を若者に教えるのは差し迫った課題となっています。トゥオンズオン県バンモン村の村長マック・ティ・ティムさんは次のように話しました。

（テープ）

「オドゥ族の言葉で喋れる人はお年寄りだけです。若者のほとんどはタイ族などの言葉を使っています。そのため、私たちはお年寄りに頼んで、若者にオドゥ族の言葉を教えるクラスを開いています。これにより、挨拶や簡単な日常会話ができるようになった若者が増えつつあります。」

かつて、オドゥ族は森の中に住んで狩猟を中心にした生活様式に従っていました。現在、豚の飼育や稲作などの農業へと変わりつつありますが、かつての狩猟採集の生活様式の一部も守られています。先ほどの村長ティムさんは次のように話しました。

（テープ）

「かつて、オドゥ族の先祖は森の中に住んでいました。豚肉と鶏肉は、低地に住む人と交換したときだけにありました。毎日の食品は、森から狩ったネズミやリスなどでした。現在は、毎日ネズミやリスを食べるわけではないですが、ネズミやリスは儀式などのお供え物として欠かせないものです。これらは、かつての毎日の食事に欠かせないものだったからです。」

オドゥ族の高床式の家

オドゥ族は藁葺の高床式の家に住んでいます。家の中には必ず囲炉りが2つあります。ガーミ村に住むオドゥ族の一人ロ・ヴァン・クさんは次のように話しました。

（テープ）

「オドゥ族の風俗習慣として、囲炉りは必ず2つ設置しなければなりません。前の囲炉りはお客さんを接待するためのもので、お肉はもちろん、野菜などを調理していけません。この囲炉りはご飯を炊くことと、暖をとるだけです。一方、奥の囲炉りは家族の料理を調理するためのものです。」

オドゥ族はタイ族とコム族の大きな影響を受けたものの、オドゥ族ならではの風俗習慣も残っています。その一つは雷に基づいて新年を迎える習慣です。オドゥ族は旧正月ではなく、「最初の雷」というお正月を楽しみます。長い間雷が鳴らなかったものの、まもなく雷が鳴ると予測されたとき、家具全部を洗って大掃除をします。そして、雷が鳴ることで新年になります。新年になると、村人の平穏な生活を守ってくれた天と地を祀る儀式を行います。オドゥ族の人々の考えでは、人間の生活はすべて、神様の手の中にあります。そのため、天と地を祀る儀式のお供え物は必ず、最も良いものでなければなりません。その意味で、この儀式はオドゥ族にとって最も重要な行事なのです。

現在、オドゥ族のアイデンティティを保つための取り組みとして、オドゥ族の言語を教えるクラスがだんだん開かれています。これにより、オドゥ族はこれからも、オドゥ族ならではの文化を誇りに生き続けることでしょう。