ベトナム北部山岳地帯のカオバン省グエンビン県ホアタム村ナチャン集落は少数民族ザオ族の居住地です。ここのザオ族の人々は今もなお、錦を織る伝統工芸を保存しています。錦織は単なる服装ではなく、ザオ族の文化と信仰の表れでもあるのです。

ザオ族の錦織

ザオ族の錦織の主な材料は麻ですが、蜜蝋を使って模様を描くことが特徴です。ザオ族の錦織りは黒または藍色をベースにして、白と青も少し加えます。そして、描かれるものの中心は動物や鳥、植物、日常生活の様子などですが、これらのモチーフは、日常生活の反映とともに、大自然に関するザオ族の考え方を示しています。例えば、星は自然の力の象徴ですが、犬は先祖を思い出させるものです。そして、8枚の花弁の花は幸運を求める意味です。

ザオ族の女性は子どもの頃に母親から錦の織り方を教わります。結婚するまでに綺麗な衣服を作らなければならないと仕込まれているからです。ザオ族出身の女性ならば誰もが錦織ができます。女性たちの器用な手で作られる独特な衣服や布団などがよく知られています。ナチャン集落のザオ族の一人バン・ティ・スアンさんは次のように話しました。

(テープ)

「いい錦織を作るために、まずいい布を選んでから色を染めます。その後、模様を描きます。民族衣装のほか、バッグやスカーフなどを作っていますが、どれも忍耐力と器用さが求められます。全ては手作りなので、心をこめて作らなければなりません。これにより、我が村の錦織は多くの人に愛用してもらっています」

ナチャン集落の錦織グループの商品が見本市で紹介されます。

2012年に、ザオ族の伝統的な錦織の伝統工芸を保存・開発するために、ナチャン集落の錦織グループが設立され、今はメンバーが17人います。グループは伝統的な衣装のほか、掛け布団や枕カバー、テーブルクロスなど20品目を作っています。グループの商品がSNSソーシャルネットワークなどで紹介されているので、周辺の人々はもちろん、遠い所からの注文も受けています。グループの担当者チエウ・ティ・ニムさんは次のように話しました。

（テープ）     

「ナチャン集落の錦織グループを設立したことは我が民族の伝統的な職業と独自の文化を守り、村人の収入を増やすことが狙いです。グループの商品は観光客に人気がありますが、新型コロナは商品の販売に多少の影響を与えました。これからも、グループの活動をさらに拡大するために、地元の行政府の支援を受けたいと思います」

ホアタム村人民委員会のホアン・トン・サオ委員長は、ナチャン集落の錦織グループはメンバーに安定した収入をもたらしているほか、伝統的な錦織の保存に対する村人の認識を高めていると述べ、次のように語りました。

（テープ）

「村の人民委員会は幾つかの会社と協力して、グループの商品を見本市や展示会などで紹介しています。また、カオバン省の農村開発事業の一部として、村人を対象とする錦織作りのクラスが開かれました。これにより、これからもグループが活動を広げてより多くの商品を販売できると期待しています」

現在、ナチャン集落に足を運ぶと、女性たちが熱心に伝統的な錦織を作って昔と変わらない風景が見られます。これは伝統的な錦織が依然としてここのザオ族の生活に密着していることの表れといえるでしょう。