漢方薬を作っている赤ザオ族の女性

赤ザオ族は何世代にもわたって伝統医学の知識を蓄積してきました。ほとんどの家庭では、家族や親族の経験をもとに、日常的な病気を自ら治療しています。各村には腕の立つ薬剤師がおり、薬の原料は主に森や小川のほとりで採取されます。栽培されることは稀で、多くの種類の植物やハーブの幹、葉、樹皮、つる、根などを探し、代々伝わる調合法に従って加工し、伝統的な漢方薬を作り出しています。

ファンタイン村の住民、フン・ムイ・ヴィエンさんは次のように語りました。

（テープ）

「赤ザオ族には実に多くの種類の薬があります。薬の名前は通常ザオ語で呼ばれています。主な原料は、山に自然に生えている木々から採取しますが、一部の植物は保存のために栽培もしています」

赤ザオ族は通常、患者の病状、体調、年齢に応じて漢方薬を処方します。薬の調製方法も多岐にわたり、煎じて飲む薬、すりつぶして使う薬、エキスを作る薬などがあります。かゆみ、潰瘍、浮腫などの症状には、煎じた薬湯で入浴したり、洗髪したり、患部を洗浄したりします。多くの薬草や薬材には特定の名前がなく、その治療効果によって呼ばれています。例えば、骨痛薬、腹痛薬、歯痛薬などがそうです。ファンタイン村の住民、リー・ムイ・シンさんは次のように述べています。

（テープ）

「赤ザオ族の薬によって多くの病気が治療できます。例えば、坐骨神経痛、腹痛、骨痛、腰痛、手足の痛みなどを治せます。薬は体調を改善し、健康に非常に良いのです」

森へ薬草を取りに行っている女性

以前は、薬用植物は新鮮なまま、または乾燥させて、湯治や飲用のために煎じて使用されていました。現在では、森から採取した薬材は乾燥薬、エキス、液体薬、塗り薬、粉末薬など様々な形態に加工されています。製品の改良や包装デザインの向上により、市場での販売機会も広がっています。

ファンタイン村の住民、バン・サイン・ヴァンさんは次のように話しました。

（テープ）

「以前は、私たちは小さな規模で薬を作っていましたが、商品化しておらず、村の人々の病気を治療するためだけに薬を作っていました。今では、私たちの漢方薬製品は商品となり、多くの場所で消費されています。そのおかげで、経済が発展し、私たちの収入と生活水準も向上しています。」

最近、2024年3月10日、グエンビン県ファンタイン村ビンドゥオン集落で、赤ザオ族の伝統的な漢方薬を保存・発展させ、民族のアイデンティティを維持することを目的とした「赤ザオ族コミュニティ」というグループの発足式が行われました。このコミュニティでは、各家庭が漢方薬の庭を作り、森から薬草を持ち帰って自宅の庭に植えることで合意しました。毎月定期的に集会を開き、メンバーが赤ザオ族の伝統的な漢方薬の保存と発展に関する経験を共有しています。

ファンタイン村人民委員会委員長で、「赤ザオ族コミュニティ」の代表であるバン・ドゥク・タンさんは次のように語りました。

（テープ）

「私たちは先祖から伝わる処方をそのまま保持しています。薬の作り方を記した本もあり、グループとして子孫たちにこれらの処方を伝え、忘れないように保存するよう努めています。現在35人のメンバーがおり、将来的にはさらに増える予定です。私たちの主な任務は民族の処方を保存・発展させることですが、観光開発とも結びついています。現在、私たちには、肝臓を冷やし、解熱するためのハーブティー、胃痛薬、副鼻腔炎・鼻炎・アレルギー薬、大腸炎薬、腎臓病治療補助薬、病気の人や出産後の女性の体力回復のための入浴剤など、さまざまな処方があります。グループでは科学技術を応用して、森の薬草を庭で栽培する研究も行っています。ここでは、いくつかの薬草の試験栽培を進めています」

「赤ザオ族コミュニティ」

現在、地元を訪れる観光客は、赤ザオ族の伝統的な漢方薬製品を購入していますが、まだその数は多くありません。グエンビン県は、約6000平方メートルの面積に、丹参、当帰、白及などの希少な薬用植物の試験栽培を行う企業に許可を与えました。栽培が成功すれば、豊富な供給源となることが期待されています。

ファンタイン村の住民、ホアン・ティ・ホン・ヴォンさんは次のように述べています。

（テープ）

「『赤ザオ族コミュニティ』というグループは活動を開始したばかりなので、薬の製品はまだ多くありません。今後、より多くの製品を作るよう努めます。処方は現在、OCOP（一村一品）製品として検討されています。近い将来、漢方薬製品もeコマースプラットフォームで販売される予定です」

カオバン省グエンビン県ファンタイン村の赤ザオ族の人々は、貴重な処方を失わずに保持し、同時に伝統的な漢方薬製造業を発展させています。これにより、地域の人々に新たな生計手段と雇用をもたらし、生活水準の向上に貢献しています。彼らの取り組みは、伝統的な知恵を守りながら、現代の需要に応えるという、バランスの取れたアプローチを示すものです。