キン族はベトナムの中の多数民族で多様な文化を誇っています。キン族の民族衣装も種類が豊富で、デザインは独特です。また、着方も地方によって様々です。
古来から20世紀初頭まで中流階級の女性や、北部の農村に住む女性たちが着用していた日常衣服アオ・トゥ・タン(ao tu than)は四枚の身頃の服です。長い丈スカートの上に前身頃があいた長い上着にヒモを締めた服であり、中にVネックのブラウスを着ます。後ろ身頃も二枚の見頃を組み合わせているため、「四枚接ぎの服」と呼ばれています。また、前身頃はボタンがなく、ベールで結びます。四枚身頃の服はアイボリーカラーの絹で作られます。ベトナム女性博物館・宣伝教育室のファム・ボック・ハンさんは次のように語りました。
(テープ)
「アオ・トゥ・タンは4枚身頃からなります。後ろ身頃の真ん中にスリットが入り、2枚に分かれますが、前身頃の2枚は幅の広い色とりどりの何本もの布で結ばれ、女性を美しく見えます。Vネックのブラウス(Yem)や平らな形の帽子(Non quai thao)がアオ・トゥ・タンとセットになります。今も、ベトナムの民謡クァン・ホの歌い手はこのような民族服を着用しています。」
平らな形の帽子の他に、女性たちは黒いスカーフのようなものをよくかぶっていました。
他方、南部の女性は前身頃と後ろ身頃を脇で縫い合わせた黒いブラウス・アオ・バーバ(Ao ba ba)を着るようになりました。動きやすいように、両脇にスリットが入っています。また、利便性を高めるため、両脇にポケットが縫い付けられ、お金や小物を入れることができます。先ほどのハンさんは次のように説明してくれました。 (テープ)
「アオバーバは河川が多い南部の地理的条件に見合うような服としてデザインされました。農民たちは常に黒や茶色のブラウスを着用します。そして女性たちはいつも白と黒のチェック柄のスカーフをアオバーバと組み合わせます。」
現在、アオバーバは改良され、それぞれの女性の体型に合わせてもっとも優雅なシルエットになるように裁断されています。また、西洋の洋服のデザインもアオバーバに取り入れられました。
さて、ベトナム女性の伝統衣装についてアオザイを抜きに語ることはできないでしょう。アオザイとは「長い衣装」という意味があり、女性の魅力を強調しています。アオザイは女性の体のラインにピッタリ合わせたもので、パンタロンと組み合わせられ、両脇のスリットがウエストまであるため、“風にそよぐアオザイの美”といわれています。アオザイはシルエットだけでも、襟の高さや形、上着のすその長さ、パンタロンの幅やすそのデザインなど、微妙に変わり、模様も豊富です。先ほどのベトナム女性博物館・宣伝教育室のファム・ビック・ハンさんは次のように語りました。
(テープ)
「アオザイはベトナム民族文化の精華を象徴するものだといえます。画家カト・トゥオンさんはアオ・トゥ・タンをアオザイに改良した人物です。歴史の動きや西洋のファッショントレンドとともに、アオザイは様々な改良を経てきましたが、伝統的美しさは保たれています。」
数千年の歴史を経た現在もキン族の女性の衣服で示されている独特な文化的価値は生きており、現代的な生活に持ち込まれていくことでしょう。