クアンニン省ビンリエウ県に暮らすサンチ族の民謡「ソーンコ」
(VOVWORLD) - 旧暦の3月15日になると、中国と国境を接する東北部クアンニン省ビンリエウ県とその周辺に暮らす少数民族サンチ族の人々は同県のフックドン村に集まって、民謡「ソーンコ(Soong Co)」を歌う祭りを楽しみます。ソーンコはサンチ族の民謡を代表するものであり、この民族の豊かな文化を支えるものでもあります。
歌垣の形で歌われる「ソーンコ」は、日常生活をテーマとしたもので、サンチ族の人々の考えや心、習慣などがわかると言われています。また、日常生活の中から生まれたソーンコは日常生活とは切り離せないようで、生活がいくら変わろうとも、今でもほとんどのサンチ族の人々が歌えます。
楽器が要らないこの歌垣は、道で出会った時や、市場で、また、畑仕事の最中、結婚式の席などで挨拶代わりに歌われています。ソーンコの歌詞は歌い手の生活に関連するもので、これはサンチ族ならではの音楽によるコミュニケーションであると言われています。バクザン省ルクガン県に暮らすサンチャイ族の一人ニン・ティ・ガンさんは毎年ビンリエウ県の「ソーンコ」祭りを楽しみにしています。ガンさんの話です。
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「サンチ族とサンチャイ族は一緒で、ソーンコ祭りの習慣があります。ソーンコには、意味深い歌がたくさんあって、人と人とのつながりを強くするものです。また、年を取った後、ソーンコを歌うと、青春時代が蘇ってくるような感じがしますよ」
ソーンコ祭りでは、歌い手は男性と女性の2つのグループに分かれて歌います。それぞれのグループにはリーダーがいて、そのリーダーは歌が上手で、語りもうまいです。また、歌い手は全員、血族関係がないのが条件です。ソーンコ祭りは男女の恋愛を生む機会をつくるためのものだからです。男女の恋愛のほか、年を取った人が、若者に親孝行や人生観などを教えるために歌うこともあります。
また、ソーンコ祭りで、ソーンコの歌と一緒に、綱引きやブランコ、竹馬など伝統的な遊びを楽しむことができます。これは、コミュニティのつながりの強化に役立つとされます。
こうしたソーンコを維持・開発することは差し迫った課題となっており、ビンリエウ県は、ソーンコ祭りの保存に力を入れています。また、この祭りは新型コロナ収束後の観光回復に役立つものとして、今年は例年より大きな規模で行われました。ビンリエウ県文化情報課のホアン・ヒュ・チョン課長は次のように語りました。
(テープ)
「これからも、ソーンコ祭りを始め、ビンリエウ県に暮らす少数民族の独自の文化を紹介する観光イベントを行う方針です。これは、伝統文化の保存と観光開発を両立させることができると思います」
サンチ族の人々の心に深く入ったこうしたソーンコの歌垣が大切にされることはこの民族の伝統文化の保存だけでなく、地元の人々の生活改善につながることでしょう。